眞個まつたく)” の例文
新字:真個
父はおこツてゐる、母夫人は冷淡れいたんだ。周三は何處にも取ツて付端つきはが無いので、眞個まつたく家庭を離れて了ツて、獨其のしつに立籠ツて頑張ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
にしろよわつたらしい。……舞臺ぶたい歸途かへりとして、いま隧道トンネルすのは、芝居しばゐ奈落ならくくゞるやうなものだ、いや、眞個まつたく奈落ならくだつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞個まつたくむづかしい問題である。周三が腦味噌のうみそ壓搾あつさくするのも無理は無い。幾ら壓搾したと謂ツて、決して彼の期待するやうな名案めいあんは出て來はしない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いゝえ、お知己ちかづきでも、お見知越みしりごしのものでもありません。眞個まつたく唯今たゞいま行違ゆきちがひましたばかり……ですから失禮しつれいなんですけれども。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞個まつたくことばちがはないもんですから、主人しゆじんも、きやくも、たゞして、のいはれをかうとつたの。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
解剖した屍體をもとの如く縫合はせる手際と謂ツたら眞個まつたく天稟てんぴんで、誰にも眞似の出來ぬ業である。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
仰々ぎやう/\しく言出いひだすと、かたき髑髏しやれかうべか、毒藥どくやくびんか、とおどろかれよう、眞個まつたくことひませう、さしたるでない、むらさききれけたなりで、一しやくずん一口ひとふり白鞘しらさやもののかたながある。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞個まつたく爲方しかたが無いのさ。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
眞個まつたくですな、いまおはなしのそのへんらしい。……わたしともだちは泥龜すつぽんのおばけどころか、紺蛇目傘こんじやのめをさした女郎ぢよらう幽靈いうれいひました。……おなじくあめで、みづだかみちだかわからなくりましてね。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くささとつては、昇降口しようかうぐち其方そつちはしから、洗面所せんめんじよたてにした、いま此方こなたはしまで、むツとはないてにほつてる。番町ばんちやうが、また大袈裟おほげさな、と第一だいいち近所きんじよわらふだらうが、いや、眞個まつたくだとおもつてください。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「これは生々なま/\としたにほひだ。眞個まつたく人臭まひとくさい。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)