ちょう)” の例文
紺屋こうやじゃあねえから明後日あさってとはわせねえよ。うち妓衆おいらんたちから三ちょうばかり来てるはずだ、もうとっくに出来てるだろう、大急ぎだ。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところへ、ドンと川長の前へ投げ出されたのは、道中早次はやつぎかご二つ、着くが早いか、その一ちょうの中から、半病人で飛び出した由造が
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
懐中紙入を出すと、一ちょう剃刀かみそりのようなものを引き出して、それで身体のあちらこちらを一寸二寸ずつ、スーッスーッと切って廻る。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なお、当日、午餐ひるげには菰樽こもだるちょうかがみをひらき、日ごろ功労のあった重臣に鶴の血をしぼりこんだ『鶴酒つるざけ』を賜わるのが例になっていた。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「極東」のシナ人までこめた世界じゅうの黄金亡者もうじゃが、バラックと二ちょう短銃と砂金袋と悪漢とシェリフの国をつくるべく押寄せた。
省作お前はかまをとぐんだ。朝前あさめえのうちに四ちょうだけといでしまっておかねじゃなんねい。さっきあんなに呼ばったに、どこにいたんだい。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
雑具小屋の中から一ちょうの鍬と古びた筍笠を取出して来た、そして裾を端折り、たすきを掛けてから、笠を冠って荒地の方へ出て行った。
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
屏風びょうぶそう手燭てしょくちょう、燭台何挺、火鉢ひばち何個、煙草盆たばこぼん何個、草履ぞうり何足、幕何張、それに供の衆何十人前の膳飯ぜんぱんの用意をも忘れてはならない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そう云ったんで……何だかわからねえけども……万一見付かって首になっちゃ詰まらねえ。事によるとあの二ちょうのパチンコで穴を
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
武士は声をかけられて初めてわれに返った。そこには一ちょう山籠やまかごを据えて籠舁かごかきが休んでいた。武士は一刻も早く鬼魅きみ悪い場所を離れたかった。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
こう云ってかえって山尾の方が男の右門を励ますので、右門はそれに力を得、枯木と生葉を掻き集め、早速に作った松火二ちょう
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうよ。器用な早業はやわざで、カンガルーの股燻製ももくんせいを一ちょう上衣うわぎの下へ隠しやがった。あいつは掏摸すりか、さもなければ手品師てじなしだ」
町役人と、利助の子分とが堅めて野次馬を追っ払ってる中へ、二ちょうの駕籠は、二匹の蜻蛉とんぼのようにピタリと着きました。
五百らの乗った五ちょう駕籠かごを矢島優善やすよしが宰領して、若党二人を連れて、石橋いしばし駅に掛かると、仙台藩の哨兵線しょうへいせんに出合った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この一ちょうのかご、走りは走りだしたものの、先棒の趾先つまさきは、いつまでも、浅草の方角を指してはいないのだ。東南に、急ぐべきを、あべこべに、西北へ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そのそばには一ちょうの斧がげ出してあるが、風の具合でその白いがぴかりぴかりと光る事がある。他の一人は腕組をしたまま立ってまわるのを見ている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鉄砲が十ちょうやりが十本ぐらい立て並べてありまして、此処こゝは市ヶ谷長円寺谷ちょうえんじだに中根大隅守様なかねおおすみのかみさま御出役ごしゅつやくになり、はかまを付けた役人がずーっと並んでいる所へ駈込んで
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
番兵所には五、六人の兵士が居って五、六ちょうの鉄砲が備えてある。もし怪しい挙動の者があればすぐに銃殺してもよいというだけの権利を番兵に付与ふよされてある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
びたかみそり一ちょう、あちこち折りこんだ讃美歌の本一冊、それから、こわれた調子笛が一つであった。
そしてそれは疑もなく、ごく近距離から発射されたものに相違なかった。室の中に一ちょうのピストルっきり見出されなかったが、しかし薬莢やくきょうは、二つ空になっていた。
店先ニ腰掛ケテ舊知ノ主人ト挨拶ヲ交シ、中国製ノ最良ノ朱墨一ちょう、小指大ノモノヲ金二千圓デあがなウ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
胸のはりさけるほど無言の絶叫をつづけながら足をちゅうに左膳の危難に駈けつけて短銃一ちょうの放れわざ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
戦闘群の戦術では明瞭に分隊——通常は軽機一ちょうと鉄砲十何挺を持っている分隊が単位であります。
最終戦争論 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
三円で払下げを受けた一ちょうの古鉄砲を、五十円で、何千挺か張宗昌に売りつけた仲間の一人の内川は、憂鬱で心配げな暗い顔をして二重硝子の窓の傍に陣取っていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
くし、こうがい、裲襠うちかけ姿のままで吉三郎が真ん中、先を成田屋、うしろに主水之介がつづいて、木挽町こびきちょうの楽屋を出た三ちょうつらね駕籠は、ひたひたと深川を目ざしました。
そのほか小銃何百ちょうか何千挺か買入れたけれども、ソレでもマダ金が彼方あっちに七、八万ドルラル残て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ちょう持って、町町で唄ってはこの刷り物を売って歩けば大阪へでも京都へでも行けるんです。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「鉄砲は、二人で一ちょうあればたくさんさ。仲のい兄弟は、なんでも催合もあいにするもんだ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
引き出しの奥に一ちょうのピストルが見えた。それはブラウンが学生時代に買ったもので、かつて使われたことがなかった。クリストフはこわれた箱の中に、数個のたまを見出した。
遠藤はこう言いながら、上衣うわぎの隠しに手を入れると、一ちょうのピストルを引き出しました。
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、朱にしても、生臙脂しょうえんじにして、墨一ちょう面相めんそう一本でもなかなか金銭が掛かります。
悪い奴が棒一本かくわちょうで、墓など掘って結構なものを得る、それが既ち掘出物で、怪しからぬ次第だ。伐墓ばつぼという語は支那には古い言葉で、昔から無法者が貴人などの墓を掘った。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宗忠は身仕度をして来た、なにか獲物えものもあろうというので一ちょうの銃も持っている。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
その時おそく「お帰りい」の呼び声勇ましく二ちょうの車がらがらと門に入りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
あっ! ピストルです! 三ちょうのピストルがこちらをねらっているのです。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ジャン・ヴァルジャンは、「夜間家宅を破壊して窃盗を働きしかどにより、」時の裁判官の前に連れてゆかれた。彼は前から小銃を一ちょう持っていて、だれよりも上手で、少しは密猟もやっていた。
ふるくからあった一ちょうの三味線は、娘の子供の時分までは、よく母親の弾いた音を聞いたが、或年の梅雨の頃、その三味線の胴皮が、ぼこぼこにたるんで音が出なくなってから何処へか隠されてしまった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
炎天のあかるい寂寞のうちに二ちょうの三味線は実によくその撥音ばちおとを響かした。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何が出るか掘ってみようというので、なおも一生懸命に棒の先で掻き散らしてみると、出たものは土鍋の破片一個、茶碗三個、衣服ようのもの一つ、錆鉈さびなたちょう、一同不審の思をなしてここを出発した。
が二ちょう立てられた。三上と大工とがそれを押した。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「何、急ぐのじゃあねえけれど、今日中に一ちょうわしが気で研いで進ぜたいのがあったのよ、つい話にかまけて忘りょうとしたい、まあ、」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しばらくすると、光秀は、手に一ちょうくわと、それから雑人ぞうにんの着る着物や山袴やまばかまなど、一抱えもかかえて、檜林の奥からもどって来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵はその機会をねらっていたのだ。図書が広縁へ出るとたんに、向うの民家の屋上に伏せてあった五ちょうの鉄砲が一斉に火を吹いた。
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
時には、三ちょう早駕籠はやかごが京都方面から急いで来た。そのあとには江戸行きの長持が暮れ合いから夜の五つどき過ぎまでも続いた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どこから手に入れたか、この日は舶来はくらい解剖図かいぼうずを拡げて、それと一緒に一ちょうのナイフをいじりながら独言ひとりごとを言っています。
それから間もなく一ちょう輿こしが、頑丈がんじょうな男にかつがれながら、藪原長者の館を出た。深編笠の武士が、輿の後から悠々と、つき添いながら歩いて行く。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
最前から入口の処に突立って、その様子を見ていた正木博士は、小使に命じてくわちょう持って来さして呉一郎に与えた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長押なげしには槍が掛けてあるし、御本人は御丁寧に冷たい人斬包丁ひときりぼうちょうを、二ちょうも三挺も取揃えて、生涯添寝そいねをしているんだと思うと、あっしは気の毒で、気の毒で
部屋のまん中で立停たちどまると、上着の内ポケットへ手を入れ、何物かを引きだしたと思ったらそれは一ちょうのピストルで二つに折って、中の弾丸たまの様子を調べた。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と是から龜藏は何処どこからか三ちょうの鉄砲を持ってまいり、皆々連立ち十郎ヶ峰に孝助の来るを待受けました。