鼓動こどう)” の例文
高まる心臓しんぞう鼓動こどうをおさえつけながら、ジェンナーはついに、搾乳婦さくにゅうふから取ってきたうみを、ジェームス少年にうえたのであります。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
小畑のたまはよく飛んだ。引きかえて、清三の球には力がなかった。二三度勝負しょうぶがあった。清三のひたいには汗が流れた。心臓の鼓動こどうも高かった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そうして胸の鼓動こどうを静めようと考えたわけでもないが、ステッキを両手に突き立て胸を張って深い呼吸をいくたびかついた。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
エンジンを入れてボートを湖面にすべり出さすと、鶺鴒せきれいの尾のように船あとを長くひき、ピストンの鼓動こどうは気のひけるほど山水の平静を破った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
だから明日の晩田中君と、世間の恋人同士のように、つれ立って夜の曲馬きょくばを見に行く事を考えると、今更のように心臓の鼓動こどうが高くなって来る。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三十秒、二十秒、十秒と、ふたりの心臓の鼓動こどうをあわせて、息づまるようなおそろしい秒時びょうじが、すぎさっていきました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、れかられへとはなしつゞけていきひまい、ドクトルはみゝがガンとして、心臟しんざう鼓動こどうさへはげしくなつてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
耳は火のようにほてり、鼓動こどうは高鳴り、電鍵でんけんを握る指端したんにはいつの間にかシットリと油汗あぶらあせにじみ出ていました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、五百之進も、顔を寄せて行ったが、花世は、桜貝さくらがいのように耳をあかくして、父と老人が、低声こごえで読む手紙の内容を、うっとりと、鼓動こどうの胸へうけ容れていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加之空氣も沈靜ちんせいなら光もしんめりしてゐて、自分の鼓動こどう、自分の呼吸こきふさへかすかみゝに響く………だから、眼前にゑて置く生暖なまあたたかい女の氣もヤンワリ周三の胸に通ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あのにぎつたほか、あのむねいだいたほかむねのあつたことを想像さうぞうして、心臓しんざう鼓動こどうも一とまり、呼吸いきふさがつたやうにおぼえた。同時どうじ色々いろ/\疑問ぎもんむねおこつた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
が、それよりももっとはげしく彼女の心臓が鼓動こどうしているのを、その瞬間、私は耳にした。そしてそれが私に、そういう愛撫あいぶを、ほんのそのデッサンだけで終らせた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
かれは、まったく死んだようになって、心臓しんぞう鼓動こどうまでも止めるようにしていた。もっとも、そんな時にはかえって心臓はドキドキとはげしくったことだろうが……。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
そうしてみなぎる心臓の血潮の奥に、活動活動と打ちつづける鼓動こどうを聞いた。不思議にもその鼓動の音が、ある微妙な意識状態から、先生の力で強められているように感じた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれど畢竟ひっきょう自分じぶんなぐさめ、苦痛くつうわすれさせるものには酒以外さけいがいないことをったが、まれたから、今日きょうまで、瞬時しゅんじやすまず鼓動こどうをつづける心臓しんぞうれて、愕然がくぜんとして、かれ
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
いよいよグレッス・アンド・ガリー事務所じむしょの戸口に立ったとき、わたしはずいぶんはげしく心臓しんぞう鼓動こどうした。それでしばらくマチアに気のしずまるまで待ってもらわねばならなかった。
私はいよいよ胸の鼓動こどうをたかめて、その辺の足跡あしあとをこまかにしらべた。
四度! 千三は次第に胸が鼓動こどうした、見物人は口々にののしる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
が、この時の彼女の心臟の鼓動こどうは殆んど止まつてゐた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
妙な表情をするに違いないと心臓の鼓動こどうを高めながら待受けましたけれども、入って行った葛岡さえなか/\出て来ません。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、それからそれへとはなしつづけていきひまい、ドクトルはみみをガンとして、心臓しんぞう鼓動こどうさえはげしくなってる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
陳はほとんど破裂しそうな心臓の鼓動こどうを抑えながら、ぴったり戸へ当てた耳に、全身の注意を集めていた。が、寝室の中からは何の話し声も聞えなかった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たわむれに恋はすまじ、戯れでなくとも恋はすまじ、そんなことを痛感したのだった。儂は、あの日のことを思い出すと、今でも心臓が怪しい鼓動こどうをたてはじめるのじゃよ
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
少年たちは、あまりのふしぎさおそろしさに、心臓の鼓動こどうもとまってしまうような気がしました。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、東儀与力は、自分の鼓動こどうを聞きながら、じっとがまのように、客卓の蔭にかがみこんでいた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の鼓動こどうとまった時、あなたの胸に新しい命が宿る事ができるなら満足です。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このときまで、まだにありありとあのおんな姿すがたのこっていたので、そのおんなんだのでないかとおもうと、心臓しんぞう鼓動こどうたかくなるのをおぼえたのです。みなみくにまちというのは、どんなまちであろうか。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
心臓しんぞう鼓動こどう尋常じんじょうでなかったことをも思い出した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
わたしの心臓しんぞうははげしく鼓動こどうした。
消してしまうのが、惜しくてたまらないのですわ。あなた、あなた、私のこの火の様な唇が分りませんの、この胸の鼓動こどうが聞えませんの。サア、あたしを抱いて。ね、あたしを抱いて
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
胸の鼓動こどうとともに、髪の根までが、ぞくッとして来た。たとえば、こころにもない穴洞けつどうに立ち迷って、思わず、四辺あたりのしじまを試してみるように、奥へむかって、彼は大声で言っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さあ、そうなると、いい年をしていて、私の心臓はにわか鼓動こどうを早めるのですね。
モノグラム (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
胸の中では、心臓がやぶれそうに鼓動こどうしています。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
胸は脈打ち(実際私は心臓の鼓動こどうをさえ聞いた)
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)