骨身ほねみ)” の例文
かみ引拔ひきぬかれますやうに……骨身ほねみこたへるやうなんです……むしにはまないとぞんじながら……眞個ほんと因果いんぐわなんですわねえ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女は身悶みもだえして、からみついている蛇の口から逃れようとするが、いよいよそれは、しっかりと巻き締めて、骨身ほねみに食い入るようです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兎に角彼女の無我にして骨身ほねみを惜まぬ快活の奉仕は、主人夫婦の急激な境遇変化に伴う寂寥せきりょうと不安とを如何ばかり慰めたか知れぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しか相互さうごはたけあらしては、せた骨身ほねみかじうてるやうな彼等かれらあひだにこんなことがければ殊更ことさら勘次かんじばかりが注目ちうもくされるのではなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つけられし如く是又長庵が惡事なりと思はるれ共本人の口より白状はくじやうさせんと猶もことばやはらげ三次が斯迄かくまで申てもおぼなきやと言はるれば長庵さればにて候此上骨身ほねみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もる苦労くろうかさなる失望しつぼう、ひしひしと骨身ほねみにしみるさびしさ……わたくしからだはだんだん衰弱すいじゃくしてまいりました。
今日でも骨身ほねみみるようにその時心配をした事を記憶しておりますが、実は、聖上御覧の間に、楠公の甲の鍬形くわがたと鍬形との間にある前立まえだての剣が、風のために揺れて
暗さは暗し、雨はいよいよつめたく骨身ほねみに通った。ああ、バルブレンのおっかあのうちがこいしい。
半死半生はんしはんしょうどろねずみとなって、泣くにも泣けぬ蛾次郎先生、いのちからがら浜松の城下を、鷲にのって逃げだしたはいいが、夜に入るにしたがって、空天くうてん寒冷かんれい骨身ほねみにてっし、腹はへるし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また石太郎は、なんどむちでこづかれたとて、いっこう骨身ほねみにこたえない。まるで日常茶飯事さはんじのようにこころえているのだから、いささかも、かれにすまないと思う必要はないわけである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
秋風の身にしみ/″\と感じて有漏うろの身の換へ難き恨み、今更骨身ほねみこたへ候。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
酒の味が、もうすツかり骨身ほねみ沁渡しみわたツて了ツたんですね。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
よもや忘れは成るまじとかき口説くどかれて千太郎は何と答へも面目めんぼくなくきえも入たき風情ありさまなりやゝあつて久八に向ひ段々の異見いけん我が骨身ほねみこたへ今更わびんも樣なし以後は心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ある建具はやぶれた此の野中の一つ家と云った様な小さな草葺くさぶきを目がけて日暮れがたから鉄桶てっとうの如く包囲ほういしつゝずうと押寄おしよせて来る武蔵野のさむさ骨身ほねみにしみてあじわった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さとですらもう寒い旧暦きゅうれきの冬十月だった。山上の寒さは骨身ほねみにしみる。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悲しさ骨身ほねみとほすなり
つくせしゆゑ千太郎の代とも成るならば舊の支配人に召使めしつかはんとかたく約束なし千太郎より書面しよめん迄も久八へ渡し置千太郎も久八が忠義の異見いけん骨身ほねみ染渡しみわたり一旦迷ひし小夜衣も長庵のめひなれば五十兩のかたりも同腹どうふくにてなしたる事ならんと思ふ故愛想あいそもこそもつき果しかば其後は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)