頬摺ほおずり)” の例文
始終ふところに入れたり肩へ載せたり、夜は抱いて寝て、チョッカイでも出せばけるような顔をして頬摺ほおずりしたり接吻せっぷんしたりした。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
見る目にもあやういまで、ともすればかどの柳の淡き影さす店頭みせさきたたずんで、とさかに頬摺ほおずりする事のあった、およそ小さな鹿ほどはあった一羽の軍鶏とうまる
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早く頬摺ほおずりしてひざの上に乗せ取り、護謨ゴム人形空気鉄砲珍らしき手玩具おもちゃ数々の家苞いえづとって、喜ぶ様子見たき者と足をつまて三階四階の高楼たかどのより日本の方角いたずらにながめしも度々なりしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
浅黄あさぎ手絡てがらけかかって、透通すきとおるように真白まっしろほそうなじを、膝の上に抱いて、抱占かかえしめながら、頬摺ほおずりしていった。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お滝は受けた半帕を、前髪に当て、額に当て、頬に当て、頬摺ほおずりして、肩へかけ、胸にいだいた、その胸ではらりと拡げ、小腕を張って、目を輝かして身を反らし
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
村端むらはずれで、寺に休むと、此処ここ支度したくを替えて、多勢おおぜい口々くちぐちに、御苦労、御苦労というのを聞棄ききずてに、娘は、一人の若い者におんぶさせた私にちょっと頬摺ほおずりをして、それから、石高路いしだかみちの坂を越して
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
打微笑うちほほえみしままいまだものいわざるにソト頬摺ほおずりす。われは舞台に見向きぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
留守はただいそ吹く風に藻屑もくずにおいの、たすきかけたるかいなに染むが、浜百合のかおりより、空燻そらだきより、女房には一際ひときわゆかしく、小児こどもを抱いたり、頬摺ほおずりしたり、子守唄うとうたり、つづれさしたり、はりものしたり
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、抱き上げた頬摺ほおずりしつつ、横に見向いた顔が白い。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頬摺ほおずりしたが、襟を合せてりんとして
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)