おほ)” の例文
雲のするわざも多きが中に、いとおもしろきは、冬の日の朝早く、平らかにわたれる雲の、谷を籠め麓をおほひて、世の何物をも山の上の人には見せぬことなり。
雲のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「カツプチノ」僧は蝋燭に火をうつして挽歌をうたひ始めたり。マリウチアは我をきて柩のかたへに隨へり。斜日ゆふひおほはざる棺を射て、母上のおん顏は生けるが如く見えぬ。
用意よういをはればたゞちにはしりて、一本榎いつぽんえのきうろより數十條すうじふでうくちなはとらきたり、投込なげこむと同時どうじ緻密こまかなるざるおほひ、うへにはひし大石たいせきき、枯草こさうふすべて、したより爆※ぱツ/\けば
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
然れども俗人は之をおほはんとし、至人は之を開表して恥づるところを知らず、俗人は心の第一宮に於て之を蓋はん事を計策す、故に巧を弄して自ら隠慝するところあるなり
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
我が四畳半をおほへる紙天井もまたこよなく趣味深き珍らしきものなり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
續きて*股肉切り取りて二重の脂肪におほはしめ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
いかでかはぢは君の眼をおほふべき
君のねがひ (旧字旧仮名) / サッフォ(著)
天は地をおほ
而して我をおほひしやみの幕は、我をして明らかに桃青翁を見るの便を与へたり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
水を呑吐する大小のいはや許多あまたありて、中には波の返す毎に僅かに其天井をあらはすあり。こは彼妙音の女怪のすみかにして、草木繁茂せるカプリの島は唯だこれをおほへる屋上やねたるに過ぎざるにやあらん。
天は地をおほ
芭蕉の葉色、秋風を笑ひてまがきおほへる微かなる住家すみかより、ゆかしきの洩れきこゆるに、仇心浮きてなかうかゞひ見れば、年老いたる盲女の琵琶を弾ずる面影凛乎りんことして、俗世の物ならず。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)