トップ
>
苟且
>
かりそめ
ふりがな文庫
“
苟且
(
かりそめ
)” の例文
溺れる心はないが、今の自分もやはりお松という女に、
苟且
(
かりそめ
)
ながら引かれて来たことを思うと、そこにも情けないものがあるようです。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
父が
後妻
(
こうさい
)
とし私が
爲
(
ため
)
に
繼母
(
まゝはゝ
)
なりしも家は段々衰へて父は四年以前より
苟且
(
かりそめ
)
の病ひにて
打臥
(
うちふし
)
たるが家の事
打任
(
うちまか
)
せたる彼のお早どのは夫の病氣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
要するにわれ等は、飽まで不可知を不可知とし、
苟且
(
かりそめ
)
にも憶測を
以
(
もっ
)
て知識にかえたり、人間的妄想を
以
(
もっ
)
て、絶対神を包んだりしないのである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
苟且
(
かりそめ
)
にも
血液
(
けつえき
)
の
循環
(
じゆんくわん
)
が
彼等
(
かれら
)
の
肉體
(
にくたい
)
に
停止
(
ていし
)
されない
限
(
かぎ
)
りは、一
旦
(
たん
)
心
(
こゝろ
)
に
映
(
うつ
)
つた
女
(
をんな
)
の
容姿
(
かたち
)
を
各自
(
かくじ
)
の
胸
(
むね
)
から
消滅
(
せうめつ
)
させることは
不可能
(
ふかのう
)
でなければならぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
第1図はその例であって、こういう風なことが始終起っては、凍上の現象は、建築の上だけから考えても、
苟且
(
かりそめ
)
に附しては置けない問題である。
凍上の話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
勿論虎屋と云っても、別に特別な悪行をしかけたこともなかったが、そう云う名の
苟且
(
かりそめ
)
にもある者に対しての心持は、決して朗らかには行かない。
又、家
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
夫れ斯の如く変化なき造化を、斯の如く変化ある者とするもの、果して人間の心なりとせば、吾人
豈
(
あに
)
人間の心を研究することを
苟且
(
かりそめ
)
にして可ならんや。
内部生命論
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
あゝ惡き狂へる
盲
(
めしひ
)
の慾よ、
苟且
(
かりそめ
)
の世にかく我等を
唆
(
そゝの
)
かし、後かぎりなき世にかく
幸
(
さち
)
なく我等を
漬
(
ひた
)
すとは 四九—五一
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
斯
(
こ
)
のくらゐ
苟且
(
かりそめ
)
ならぬ
恋
(
こひ
)
の
紀念
(
きねん
)
が、
其後
(
そのゝち
)
唯
(
たゞ
)
忘
(
わす
)
られて
此背負揚
(
このしよいあげ
)
の
中
(
なか
)
に
遺
(
のこ
)
つてゐるものとは。
如何
(
どう
)
しても
受取
(
うけと
)
れぬ。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
又
(
また
)
苟且
(
かりそめ
)
にも一つの
神社
(
じんじゃ
)
に一
頭
(
とう
)
の
神馬
(
しんめ
)
もないとあっては
何
(
なん
)
となく
引立
(
ひきた
)
ちませんでナ……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
勢ある家の事とて、羅馬に名高き尼寺の首座をば、今よりこの姫君の爲めに設けおけりとぞ。さればこの君には、
苟且
(
かりそめ
)
の戲にも
法
(
のり
)
の
掟
(
おきて
)
に背かぬやうなることのみをぞ勸め參らせける。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
『ノートル・ダーム』の翻訳を
推敲
(
すいこう
)
していたからであったかも知れないが、それならばなお更、死の
淵
(
ふち
)
に
瀕
(
ひん
)
してすらも決して
苟且
(
かりそめ
)
にしなかった製作的良心の盛んであったを知るべきである。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
天晴十兵衞汝が能く仕出来しさへすりや其で好のぢや、唯〻塔さへ能く
成
(
でき
)
れば其に越した嬉しいことは無い、
苟且
(
かりそめ
)
にも百年千年末世に残つて云はゞ
我等
(
おれたち
)
の弟子筋の奴等が眼にも入るものに
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
諸戸は親子という
苟且
(
かりそめ
)
の
絆
(
きずな
)
に、幾度心を乱したことであろう。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
苟且
(
かりそめ
)
の平和より真面目の争はまだ
優
(
まし
)
です。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
苟且
(
かりそめ
)
にもいやな顔を
為
(
し
)
ません。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
人は只
實心
(
じつしん
)
を旨とし
苟且
(
かりそめ
)
にも
僞
(
いつは
)
り
欺
(
あざむ
)
く事勿れと然るを言行相反し私欲を
逞
(
たくま
)
しうなす者必ず其の身を
亡
(
ほろぼ
)
すこと古今珍しからずと雖も人世の
欲情
(
よくじやう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
さてこの光線こゝより降りて最も
劣
(
おと
)
れる物に及ぶ、
而
(
しか
)
してかく
業
(
わざ
)
より業に移るに從ひ力愈〻弱く遂には只はかなき
苟且
(
かりそめ
)
の物をのみ造るにいたる 六一—六三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼は
漸
(
やうや
)
く教義を探り、この中に
安慰
(
なぐさめ
)
を求めんとしたりしたが、この事も亦た彼を失望せしめたり、教にありて世を渡るといふなる信者づれも
苟且
(
かりそめ
)
の思ひ定めにて
トルストイ伯
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
苟且
(
かりそめ
)
にも、小説に書く場合には、私自身のことを書いて居ても、決して、私心を以て描くのではない。
二つの家を繋ぐ回想
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「くどい、ほかのこととは違って
苟且
(
かりそめ
)
にも上様の悪口を申し上げた奴、その分には捨て置き難い」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
おつぎは
十八
(
じふはち
)
というても
其
(
そ
)
の
年齡
(
とし
)
に
達
(
たつ
)
したといふばかりで、
恁
(
こ
)
んな
場合
(
ばあひ
)
を
巧
(
たくみ
)
に
繕
(
つく
)
らふといふ
料簡
(
れうけん
)
さへ
苟且
(
かりそめ
)
にも
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
程
(
ほど
)
一
面
(
めん
)
に
於
(
おい
)
ては
濁
(
にごり
)
のない
可憐
(
かれん
)
な
少女
(
せうぢよ
)
であつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
子よ、汝いま知りぬらん、命運に委ねられ、人みなの
亂
(
みだれ
)
の本なる世の富貴のただ
苟且
(
かりそめ
)
の
戲
(
たはぶれ
)
を 六一—六三
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
而して又た、少しく禅道を謂ふものあらば、即ち
固陋
(
ころう
)
なりと罵り、少しく元禄文学を
道
(
い
)
ふものあらば、即ち
苟且
(
かりそめ
)
の復古的傾向なりと曰ふ。嗚呼不幸なるは今の国民かな。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
また
苟且
(
かりそめ
)
の病に命を取られるような
脆
(
もろ
)
い鍛錬のお方でもない、いわんや
刀刃
(
とうじん
)
の難によって命を
殞
(
おと
)
すことのあり得べきお方ではない、もし先生が死なれたとすれば、病難、剣難のほかの
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
苟且
(
かりそめ
)
に言ひけることを。その人の命沈めと。神よさしよさせりければ。悔ゆれどもせむすべ知らに。ひとり子とめでし少女を。手ひかひてなげき告ぐらく。命をし永く欲りせば。徒にものな言ひそと。
長塚節歌集:1 上
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
苟且
(
かりそめ
)
の事をその未だ在らざるさきに知るにいたる、これ時の
現在
(
いま
)
ならぬはなき一の點を視るがゆゑなり
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
之を
苟且
(
かりそめ
)
にすべしと
云
(
いふ
)
にはあらねど、真正の歴史の目的は、人間の精神を研究するにあるべし。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
苟且
(
かりそめ
)
の物を愛するため自ら
永遠
(
とこしへ
)
にこの愛を失ふ人のはてしなく歎くにいたるも
宜
(
むべ
)
なる
哉
(
かな
)
一〇—一二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
伏姫が父を
諫
(
いさ
)
めて、賞罰は
政
(
まつりごと
)
の枢機なることを説き、一言は以て
苟且
(
かりそめ
)
にすべからざるを言ひ、身を
捐
(
す
)
てゝ父の義を立てんとするに至りては、宛然たるシバルリイの美玉なり。
処女の純潔を論ず:(富山洞伏姫の一例の観察)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
対手は
能
(
よ
)
く冷罵者を軽重す可ければ、この吟味も亦た
苟且
(
かりそめ
)
にす可からず。
「油地獄」を読む:(〔斎藤〕緑雨著)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
“苟且”の意味
《名詞》
苟且(こうしょ、かりそめ)
間に合わせ。
疎か。軽率。
(出典:Wiktionary)
苟
漢検1級
部首:⾋
8画
且
常用漢字
中学
部首:⼀
5画
“苟且”で始まる語句
苟且偸安