はよ)” の例文
「そしてはよう戻ってにゃあかんに。晩になるときっと冷えるで。味噌屋がすんだらもう他所よそへ寄らんでまっすぐ戻っておいでやな」
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
三が日の晴着はれぎすそ踏み開きてせ来たりし小間使いが、「御用?」と手をつかえて、「なんをうろうろしとっか、はよ玄関に行きなさい」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「糸ッ、何を泣いてるのや、はよ出してやらんかい。わいの紋付も絹の外出着よそゆきも、皆包んでやれ、ほほたら、少しは性根にこたえるやろ」
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
何にしても、はようこの刀の綱を解いてしまわねば——玄蕃は、何時の間にか、額部ひたいに大きなあせつぶにじませて、必死になっていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あのリヽーちやんあの人のそばからはよう離してしまひなさい、あの人それを承知しないならいよ/\怪しいではありませんか。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其の病の原因もとはと、かれく知る友だちがひそかに言ふ、仔細あつて世をはようした恋なりし人の、其の姉君あねぎみなる貴夫人より、一挺いっちょう最新式の猟銃をたまはつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たかやまには、あきがきて、はやくも冷気れいきのたつのが、ずっとさとのほうよりははようございました。いろいろのむしが、自分じぶんたちのうえかなしんでいています。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はよう、運ばんけい。」と云つた。駿介はハッとして、ひどくあわてた氣持で石に抱きついた。そのあるものは彼一人の力にはほとんど餘るほどの重さだつた。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「あゝ美奈さん。兄さんをはよう向うへ連れて行ってね。それから、杉野さんをお通しするように。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ばかな……あなたにも似合わん、そうはよう落胆する法があるものかい。どれ一つ見舞ってやろう」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
同室どうしつだれかが釦鈕ぼたんおとしたとかさじおとしたとか場合ばあいには、かれがまず寝台ねだいからおきあがって、ってる。毎朝まいあさおきると同室どうしつ者等ものらにおはようとい、ばんにはまたお休息やすみなさいと挨拶あいさつもする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おこのがまた、白壁町しろかべちょうさんへ、どのような用事ようじったのじゃ。はよかせ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「おいど、押して上げるさかい——この子、はよんかいな」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「えろう、はようおまんな。何というてやはるのやな。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「後がつかえるから、はよう入ってもらいたいが」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ほんとうにはようございますこと。」
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おはよう」
算盤が恋を語る話 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おはよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんた光ちゃん待ってんねんやろ。今えらい事件起って、光ちゃんから大急ぎで迎いに来てくれいう電話あってん、あんたもはよ乗んなさい」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ほんとうにくらくなりました。あんなにくもゆきがはようございます。はやいえかえりましょう。」とこたえました。
二つの運命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はよう内さ行くべし。われ嬰子にがはおっぬべえぞ。赤痢さとッつかれただ」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おせんがちゃをくむ格好かっこうじゃ、はよたがいい」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
母は世をはようしたのである……
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目玉めえだまはよもってい。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はよ行こ、早行こ」とき立てて、大タクの案内人に手エ取られてタクシーい乗るまでは、足が土に着けしませんねん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まだ、さくらはなも、ももはなくにははようございましたけれど、うめだけが垣根かきねのきわにいていました。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はいおはよう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「そいでも結婚出来でけへんいうのんは、何ぞ光ちゃんの家の方に反対あるのん違いますやろか? いつも私には、自分ははよ結婚したいいうてはりますで。」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「それに、いつもよりか、はようございましたね。」と、八百屋やおや主人しゅじんがいいました。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はよおすけど、横におなりやしたらどうどす? そのうちにお帰りやすやろさかい、………」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「おはよう。おまえの元気げんきのいいかおると、わたしのこころまでせいせいします。なにかいい報知しらせってきたこととおもうが、きかせておくれ。」と、いもうとは、はとにかっていいました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
はよう、おおきくなって
三か月 (新字新仮名) / 小川未明(著)