みち)” の例文
新字:
老夫は鞭をうさぎうまに加へて、おのれもひたと引き添ひつゝ、暗きみちせ出せり。われは猶媼の一たび手もてさしまねくを見しが、その姿忽ちかさなる梢に隱れぬ。
……去年きよねんはるごろまでは、樹蔭こかげみちで、戸田街道とだかいだう表通おもてどほりへ土地とちひとたちも勝手かつて通行つうかうしたのだけれども、いまは橋際はしぎは木戸きど出來できて、くわん構内こうないつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何の風情もない、饅頭笠を伏せた樣な芝山で、逶迤うねくねしたみちが嶺に盡きると、太い杉の樹が矗々すく/\と、八九本立つてゐて、二間四方の荒れ果てた愛宕神社のほこら
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
みちを歩いてゆく私の影はすくすくと立つた杉の柱を𢌞折して來る、冬の日よりもまだ弱い日向のなかにあらはれ、木立のなかに消えたり、熊笹の上を這つたりした。
闇への書 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
もう明るさが紙の上にはうすらいでいつたけれど、私はすら/\と書きつゞけてゐると、そのとき何か知らみちを上つてきて、私から二ヤードばかりの處に何か止つたのだ。
そしてこれは瀧壺へ下りさせるに足るみちを開くに限ると考へた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
八五郎の氣の輕さ、其處から畑の中のみちを一散に飛びます。
ゆきなれし小みちをゆきき
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
みちを川邊にもとむれば
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今私が登つて行くみちを、殆んど九年も前に下つて行つたときも矢張り彼女に連れられてだつた。
もとのみちを、おもへだててひろ空地あきちがあつて、つてはにはつくるのださうで、立樹たちきあひだ彼方此方あちこちいし澤山たくさん引込ひきこんである。かはつてふる水車小屋すゐしやごやまた茅葺かやぶき小屋こやもある。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
數條のみち、小房多き數軒の家あり。その壁には丹青の色殘れり。エルコラノの市の天日に觸るゝ處は唯だこれのみなりといへば、工事の未だはかどらざることポムペイのたぐひにあらずと覺し。
そのみちに待ちし子らさへ
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
酒代さかてをしまぬ客人きやくじんなり、しか美人びじんせたれば、屈竟くつきやう壯佼わかものいさみをなし、曳々聲えい/\ごゑはせ、なはて畦道あぜみちむらみちみにんで、三みちに八九時間じかん正午しやうごといふのに、たうげふもと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
盜人のみちのごと安らふときなきを