あや)” の例文
実に微妙な光線のあやで、それらの綴りが、こうもよめる不思議を見出すものはありません「その胸に よろこびのしるしをつけん またの日」
糸子は床の間に縫物の五色を、あやと乱して、糸屑いとくずのこぼるるほどの抽出ひきだしを二つまであらわに抜いた針箱を窓近くに添える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あなたさまのあやに美しきおん目を拝ませてくださいますならば、たとえその後で私を罰せられ、私を投獄あそばし
土地の高低もなければ、建築のあやもなく、一つのひださえもない。全景が氷のようで規則的で醜くかった。およそ均斉シンメトリーほど人の心をしめつけるものはない。
映って、そして、緋に、紫に、朱鷺色ときいろに、二人の烏帽子、素袍、狩衣、あやあるままに色の影。ことにお珊の黒髪が、一条ひとすじ長く、横雲掛けて見えたのである。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十分間の休憩を置いて管絃楽オルケストラが始まる度に下手へた連中れんぢゆうひき込んで、四方の観棚ロオジユの卓を離れて出る一双づゝの人間がいり乱れながら素晴しい速度で目もあやに踊つて廻るのは
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
山も見えず川も見えずもちろん磯には石ころもない。ただただ大地を両断して、海と陸とに分かち、白波と漁船とが景色をあやなし、円大な空が上をおおうてるばかりである。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
女はその時そこにいるのがもうたまらないと云うようにしてちあがった。単衣ひとえの上に羽織はおった華美はでなおめし羽織はおり陰鬱いんうつへやの中にあやをこしらえた。順作はそれに気をとられた。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
玉きはる いのちのうめき ほむらして あやなす雲と 群立むらたちにけむ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あの三番目が「モンナミ」のあやちゃんだど。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
雲照らふ落日いりひあけに水の絵のあやも乱れて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
酒の香、きねいろあやみだれうかぶ、——
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しぬびの光よ、あやなきゆめごと
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかすがにあやゆれば
わなゝき (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
これさへ色とあやありて
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もろあやにうつろひて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
涌來わきくあやかすかにも
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
されば、髪飾かみかざり、絹のあや、色ある姿はその折から、風呂の口に吸い込まれて、もすそは湯気に呑まるるのである。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よしさらば、にほひ渦輪うづわあやの嵐に。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あやなす雲にうちのりて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
よろづ栄光さかえ千々ちゞあや
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春風はるかぜあやの筆
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
前途ゆくてへ、今大鳥居をくぐるよと見た、見る目もあやな、お珊の姿が、それまでは、よわよわと気病きやみの床を小春日和こはるびよりに、庭下駄がけで、我が別荘の背戸へ出たよう、扱帯しごきつま取らぬばかりに
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いさごの限りあやもなく暮れてゆくなり。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あやなす雲にうちのりて
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くもあやときをのせ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
希望のぞみ瑞木みづきあやふ蔭に入りき。——
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あやにうつろふ夕まぐれ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あやひとよぶにぎわひに
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
情の日のあやおほき空の下へ。
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あやにうつろふ夕まぐれ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いろあやととなふ虹のごとく
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
その日に空のあやを見し
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
その灰いろにあやといふ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
影にあやなすあたり……
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
夕にはまたあやを織る
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)