)” の例文
旧字:
その後も松屋は年々これを繰り返し、バーゲン・セールは松屋の年中行事となっていたが、銀座進出と同時にこれをめてしまった。
「ほんとに商売をめてしもうてからにします」とばかりで、夜遅く近処の風呂にゆくほかは一日静かにして家にとじもっていた。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
脈が取れるようになると、もうパッチと半纒とをめてしまい、今度は自分が抱車に乗って開業医になりはせぬか、それが心配である。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
奥「あゝたれうらみましょう、わたくしは宗悦に殺されるだろうと思って居りましたが、貴方御酒をおめなさいませんと遂には家が潰れます」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女の母親は、貧しい中にも娘の行末を楽みにして、画の先生へ通うことをめさせなかった。幾年か彼女は花鳥の模倣を習った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ところが細君の方はもともと役者がしょうに合っている訳なんだからかどうか分りませんが、何となくめたくなかったのであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
氏が辞職と共に俳優をめて仕舞しまへば永久この恩給に浴する事が出来るが、の劇場へ出れば十八万円は一切没収される規定なのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そしてもし、為損しそんじれば、男として腹を切らなければならないから——武家奉公というものがこんなものならめたほうがいい。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気の早い子だねとお京のさとせば、そんならお妾に行くをめにしなさるかと振かへられて、誰れも願ふて行く処では無いけれど
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
土手下で小さな煙草店をやっていた私の母が、その店をめて、小梅の父のところに片づいたのは、私が四つか五つのときだったらしい。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
いまは酒はめているが、酒を飲んだ頃の私は酔えば雲烟濛糊の間に、舟をこぎ、眼をつぶりながら睡りにおちるまで杯をはなさなかった。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「伍廷芳さん、近頃お国には貴方がしておいでの、尻尾のやうな弁髪をめようつて運動が起きてるさうぢやありませんか、結構ですね。」
二三日前のふと考へて面白がつた酔興すゐきようのことも、いよ/\紫紺しこんにしてくれと云ふ時にはもうはづかしくなつてめようかと迄思つたのであつた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まだ電燈のない時代で、瓦斯ガスも寺島村には引いてなかったが、わざわざランプをめて蝋燭にしたのは、今宵こよいの特別な趣向であったのだろう。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「だがきょうのようにお前をいじめる事は、これからはめにするよ。」男はさげすんであわれむような調子でこう言い足した。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
それだけおめになりましたがね、それでも四十人だけ手のすいてる方が、寺まで来て下すったと云う話でござえしたよ。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『この頃はすつかり面会日をめて、いつものお客さん達を断つていらつしやいますよ。でも、そつと入つてひとつ婆さんに聞いて御覧なさい』
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
従ってその次の開墾の際にはまたまたその地名をめてしまって自然の状態に戻り、今日はたいていなくなったのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あのことだけで、学校をめるほどの理由になろうとも思えなかったが、やはり幾分は関係があるような気もした。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それほど手広くやつて居たのに、どうしてめたのか知らなかつた。多くの女達も離れて行つて居るらしかつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
たとえ学問のためとはいえ、両親のなきあと酒造る父祖の業をほしいまゝにめてその産を使い果たせし我なれば
俳諧はいかいは大阪にいた頃点取てんとりということを人から勧められたけれど、宗匠の人物に不服だったのと、無学の人にもかなわなかったりするのでめたのだそうです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
カインツは馳け回って大声に歓呼しながら帽子を振り、ロッテはもう役者をめるといって苦しげに泣いた。
エレオノラ・デュウゼ (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
僕もせめて三十円くらいの収入があるようになったら、お前も商売をめて、皆でいっしょに暮すがなあ。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
断然めるつもりであったのを、夫や知己に説かれて日本の舞台へも立つようになったとはいえ、それではあまりこの女優の生涯が御他力おたりきで、独創の見地がなく
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これほどの見分けもつかぬような人は、文学なんかおめなさいと申しあげるのほかはないのである。
翻訳の生理・心理 (新字新仮名) / 神西清(著)
月々三百円に近い生活費を出していた母の出鱈目でたらめさに驚いたが、今更どうすることも出来ず新子はあわてて、自分で学校をめてしまい、母を勧めて、家賃の安いここ
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
精々珈琲店カフェへ寄るぐらいであった。酒も煙草たばこめてしまった。で、珈琲店では曹達ソウダ水を飲んだ。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
我儘な友子さんは、芳子さんがじっと独りで堪えているのをよい事にして、自分が学校をめるまで、二年の間政子さんと芳子さんの仲を悪くさせようとしていたのです。
いとこ同志 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかし奴が吐き出すかも知れないと思って、途中で動物園に行くことをめにして料理店へ這入ってしまった。幸におれは一工夫して、これならばと一縷いちるの希望を繋いだ。
(新字新仮名) / オシップ・ディモフ(著)
これはシカチェから僧侶をめて出て来て、こちらで商売をして居って相当の暮しをして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
阿久はもと下谷したやの芸者で、めてから私の世話になって二年の後、かたばかりの式を行って内縁の妻となったのである。右隣りが電話のボタンをこしらえる職人、左隣がブリキ職。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
内も今では相応におかねも出来たのだから、かう云ふ家業はめて、楽隠居になつて、お前に嫁をもらつて、孫の顔でも見たい、とさう思ふのだけれど、ああ云ふ気の阿父さんだから
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それも今から考えてみると全く教師のお情けでしょう、試験の得点は落第点とほとんど間髪をれず卒業者中最後の末位でした、アハハ。しかし持ったがやまいでまだ大食はめられません。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「田舎の人が、百姓をめて、誰も彼も町へ行って商人になるからであります。」
都会地図の膨脹 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
学校は勝手にめて来るし、ああして毎日碌々ごろごろしてゐて何をする積りなんですか。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
医師の薬をめてくれということ、これは眼鏡屋の方でも同じことであった。
「それにこの二三日は、すこしもないので、今晩はすきな酒もめている」
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
君是れ程筋が立つて居るのに、し兼吉を無罪にすることが出来ないならば、弁護士をめて仕舞へと、先生様がおつしやるぢやないか、すると其方そのかたもネ、よろしい約束しようとおつしやるんだよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
およそ九年ばかり無事に暮して来ましたが、とうとうある日、ある事件のために、安死術を行うべきであるという私の主義が破られたばかりか、医業すらもめてしまうようなことになりました。
安死術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
御宗祖丹後守高次たんごのかみたかつぐ公の御愛臣にて島田重左衛門しまだじゅうざえもんと申す者にございましたが、故あって慶長十五年七月、高次公より五千金を拝領のうえ武士をめ、大阪に出て唐船物売買を始めたとござります
入婿十万両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
兄は弟のあさましき言葉に深きうれいを起し、血統ちすじの兄弟にてすらもかくまでにむごつれなければまして縁なき世の人をや、ああいとはしき世の中なりと、狭き心に思ひ定めて商買しょうばいめ、僧と身をなして
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
もうこの商売もめでございます。これから孫のともらいをして、わたくしは山へでも這入はいってしまいます。お立ち会いの皆々様。孫はあなた方の御注文遊ばした梨の実のために命を終えたのでございます。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
百姓の難渋を見ていることが出来ないというので、死を決して増上寺から不正の升をかすめて町奉行まちぶぎょうに告訴した、権之助のために増上寺の不法はめられたけれども、かれはそれがために罪に問われて
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
私のとこでもそんなことでお園さんにあの時められでもすると困るさかい……それまでは私もあんたはんという人があってお園さんを
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
その一回もまたしばらくするとめになった。そうして葛湯の分量が少しずつ増して来た。同時に口の中が執拗しゅうねねばり始めた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『いや、どうも、寒いの寒くないのツて。』と敬之進は丑松と相対さしむかひに座を占めて、『到底とても川端で辛棒が出来ないから、めて帰つて来た。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
家に帰った当座の父は「煙草だけはどうもめられないが、酒だけは、これがいい機会だから、こんりんざい、もう廃める」
重々無礼を致したとお詫を申さなければならん身の上、是よりぷッつり悪事をめて、お前さん元の粥河様になって下さい
従来これまでのように男の方の小説を模倣する事をめ、世間に女らしく見せようとする矯飾の心をなげうって、自己の感情を練り、自己の観察を鋭くして
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)