左手ひだり)” の例文
くらひふとつた時平しへいどんの尻こぶら、二つ三つ……」と左手ひだりの拳で右の二の腕を打つところがある。それを菊之丞がういふかは幕内の面白い問題となつてゐた。
鱠手かしはびとなるもの、まづ我が両眼を左手ひだりおゆびにてつよくとらへ、七六右手みぎりぎすませし七七かたなをとりて俎盤まないたにのぼし、七八既に切るべかりしとき、我くるしさのあまりに大声をあげて
わたくしいそ取上とりあげた。素早すばや一個いつこ夫人ふじんわたし、今一個いまいつこ右手めてとらへて『日出雄ひでをさん。』とばかり左手ひだり少年せうねん首筋くびすぢかゝへたときふねたちまち、天地てんちくだくるがごとひゞきとも海底かいていぼつつた。
右手みぎに髯をつかみ、左手ひだりに鏡を持った主人は、そのまま入口の方を振りかえる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
左手ひだりの障子には、ひょろひょろとした南天の影手水鉢ちょうずばちをおおうてうつむきざまに映り、右手には槎枒さがたる老梅の縦横に枝をさしかわしたるがあざやかに映りて、まだつぼみがちなるその影の
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
昨日着いた時から、火傷やけどか何かで左手ひだりの指が皆内側にまがつた宿のかかあ待遇振もてなしぶりが、案外親切だつたもんだから、松太郎は理由わけもなく此村が気に入つて、一つ此地ここで伝道して見ようかと思つてゐたのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのかたはらには、日出雄少年ひでをせうねんは、れい水兵すいへい姿すがたで、左手ひだり猛犬まうけん稻妻いなづま」の首輪くびわとらへ、右手ゆんで翩飜へんぽん海風かいふうひるがへる帝國軍艦旗ていこくぐんかんきいだいて、そのあいらしい、いさましいかほは、莞爾につこ此方こなたあほいでつたよ。