家扶かふ)” の例文
そう思っていたが、又左衛門は朝早く家扶かふを呼んで、病気の届けを出すようにと命じた。それを聞いて、折之助はもうだめだと思った。
雪と泥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が、一寸間を置いて、あわただしく車内へ馳せ込んだ男は、先の紳士と同年輩らしい少し古びた洋服着の、一見して一行の家扶かふであることが分った。
動かぬ女 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もしこの家扶かふ下座敷したざしきにゐたまゝであつたならば無論むろん壓死あつししたであらうが、主人しゆじんおもひの徳行とくこうのために主人夫妻しゆじんふうふとも無難ぶなんすくされたのであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
総立になって客間へ転げこんだのは、日頃沈着そのもののような顔をして居る、家扶かふ本藤もとふじです。息せき切って
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
家扶かふをしておいでになりましたでしょう? 殿下の御改革で、宮家をお離れになって、ここにおいでになる御婦人の旦那様のペーデル・ステーンセン伯爵の手で
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それは、新門跡夫人の父君、九条道孝みちたか公が、家扶かふをつれて急いで東京から来着し、おもな役僧一同へ
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
家扶かふの娘の十二三になるのをかしらにして、娘が二三人いたが、僕を見ると遠い処から指ざしなんぞをして、ささやきあって笑ったり何かする。これも嫌な女どもだと思った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
甚之助じんのすけとて香山家かやまけ次男じなん、すゑなりにはないとヾ大輪おほりんにて、こヽのつなれども權勢いきほひしのぎ、腕白わんぱくかぎりなく、分別顏ふんべつがほ家扶かふにさへはず、佛國ふつこく留學りうがく兄上あにうへ御歸朝ごきてうまでは
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
恰度ちょうどそのころ、彼には鳥渡ちょっと気懸きがかりな事件が生じた。それは家扶かふ孫火庭そんかていが、一週間ばかりというものは、行方不明になったことだった。彼に行かれては、漢青年は浮木ふぼくにひとしかった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると此時たちまへやがスーと明いて、入って来たのは此家の老家扶かふで、恭しく伯爵の前に頭を下げ、「殿様に申上げます唯今ただいま之れなる品物が、倫敦ロンドン玉村たまむら侯爵家より到着致して御座います」
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
夜がふけると、一層身に染みて、惚込ほれこんだ本は抱いて寝るといふ騒ぎ、頑固な家扶かふ嫉妬じんすけな旦那に中をせかれていらつしやる貴夫人令嬢方は、すべて此の秘伝であひゞきをなすつたらよからうと思ふ。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこへ、家扶かふの大井が、背の高いひとを案内してきた。祖父は
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
六兵衛とは家扶かふ和田六兵衛のことで、支度というのを見ると釣竿らしい長い包のほかに、小さな葛籠つづらほどもある風呂敷包が二つもあった。
半之助祝言 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
當時とうじ二人ふたりとも木造家屋もくぞうかおく二階にかいにをられたので、下敷したじきになりながら小屋組こやぐみ空所くうしよはさまり、無難ぶなんすくされたが、階下かいかにゐた家扶かふ主人夫婦しゆじんふうふうへあんじながらからうじて
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
死後、鎮魂曲レクイエムはフランベルク伯爵が自分の名で夫人の死をいたむ鎮魂曲を発表するため、家扶かふつかわしてモーツァルトに代作を依頼したのだと解ったが、それはしかし後の祭であった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
漢青年は遂に決心をして、家扶かふの孫火庭を呼んで、痔疾じしつの治療をしたいと云った。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自然にこの別寮の家扶かふのやうな役廻りになつてゐた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
家扶かふはともかく供をする小者二人は必要なことなど、かなりな金額のすべてを四人の友達にまかなってもらうほかに、しようがなかったのだ。
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それでも家扶かふの長谷部は、特別丁寧なお辞儀を一つして引っこみます。
死の予告 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その頃、彼は故郷の杭州を亡命して、孫火庭そんかていという家扶かふと共に、大日本の東京に、日を送っていた。日本へ渡ったときは、まだ小さい少年だったので、日本語を覚えるのに余り苦労をしなかった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
給仕は家扶かふと若い家士たちで、鎌二郎はかれらを見るたびに、この家にも早く嫁を迎えなければならない、と繰返し云った。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
下座のほうに、家扶かふ鷺坂靱負さぎさかゆきえがいて、甲斐に挨拶をし、甲斐のために席をはらった。甲斐はそこで診察の終るのを待った。
祖父はこのほかにも家扶かふの渡辺老人や、七人の家士や、下男女中たちにも彼をひきあわせた。悠二郎はかれらがみんなくみし易いことをみぬいた。
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……泰三の部屋は玄関に近く、家扶かふの相模忠之進と隣り合っている、近づいてゆくと、そこでは誰かわからないがいま盛大に組討ちをやっていた。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこまで読んだとき、家扶かふの沢井又二郎がはいって来た。広蓋の上に青竹の籠をのせたのを持っていて、いま使いの者がこれを届けて来たと告げた。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
城からさがった孝之助が、父の病間へ挨拶にいって、着替えをしに居間へはいると、家扶かふの伊部文吾が来て、北畠から使いがあったと低い声で云った。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
代二郎は居間へ戻った、家扶かふの小泉専之丞せんのじょうや、三人の若い家士たちが、脇の間で不安そうに坐っているのが見えた。
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とぎをしていたのは格之助兄弟と家扶かふ六郎兵衛ろくろべえ用人ようにん左内さない、それに若侍たち四五人だった、女たちは次の間にいた。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「吉川だ」と彼はさえぎった、「彼は家扶かふ、おまえは功刀の主婦だ、主従のけじめをはっきりさせないと、一家のきりもりはできないと云ってある筈だ」
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
にもかかわらず吝嗇漢りんしょくかんというか、次弟を町奉行所の書記に出し、三弟は家扶かふの代役に使い、四番めの昌平などは
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
手作りの牡丹ぼたんを持参され、おまえが城中へ詰めていると聞かれたので、家扶かふ吉塚よしづかに壺を出させ、おまえの居間へ活けて帰られた、そのとき見知らぬ娘がいるので
その木戸を通って (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家扶かふはあっと低く叫んだ、図書は拳で膝を打った。衝上げてくる忿怒を抑えることができないらしい。
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
庄司千蔵である、「たのむ、たのむ」遠慮も会釈もない叫び声だ、奥から家扶かふが走って来て、「お静かにお静かに」と制止した、「なに御用で、何誰どなたさまでございます」
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
住居へ帰り、着替えをするとき、家扶かふの吉川甚左衛門が、妻のふじが寝ていることを告げた。いまは悪阻つわりがいちばんつよい時期らしいから、劬ってあげるようにとも云った。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は二十九歳になるがまだ妻をめとらない。両親は亡く、古くからいる家扶かふ下僕げぼくらとくらしながら、いつとなく側女そばめのような者を引入れ、子供まであるという噂も伝わっていた。
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
少しばかり腰が曲っている、着物も粗末だし袴はしわくちゃであった。ひと眼で家扶かふだということがわかる人態で、正しくそのとおりだった。そこで菅田平野は本気に腹を立てた。
日日平安 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし、そこへ家扶かふの権之丞が来た。詳しいことはわからないが、父が病気になったし、江戸の滞在が延びすぎたから、ひきあげて甘利へ帰るように、といいに来たものらしい。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
襖をあけたのは、家扶かふの堀内惣左衛門そうざえもんであった。甲斐は筆をとめて振返った。
計之介が帰って一刻ばかりすると、家扶かふの松野伊太夫いだゆうが、二人の下僕をつれて来た。松野は父の代からの家扶であるが、半年まえに自分から暇を取り、親類の家に寄食していたものであった。
葦は見ていた (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
半三郎は出仕もせず、酒を飲んだり遊び歩いたりするばかりで、家計は窮迫し、家扶かふ家士かしも、下男小者も出ていってしまった。借財はかさむだけ嵩み、いまでは友人たちもさじを投げてしまった。
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
弘田家には家扶かふの渡辺五郎兵衛と、ほかに家士が七人と、下僕と下婢とで五人、馬を三頭飼っていた。若尾は侍長屋のほうへは近よるなと云われ、内庭の仕切からそっちへは決してゆかなかった。
みずぐるま (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家扶かふがなにを云いたがっているか、正四郎にはもう察しがついていた。
その木戸を通って (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家扶かふが知らせにきた。
入婿十万両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)