光明ひかり)” の例文
……暗夜に露地を歩く者は、家の雨戸の隙間から、一筋洩れる灯火の光、そういうわずかな光明ひかりにさえ、うんと喜悦よろこびを感ずるものだ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
体内に灯された処女の生命いのちが、一ひん、一笑、一挙手、一投足に、恐ろしいばかりの光明ひかりになって、その五体から発散するのです。
『これほどあなたが立派りっぱ修行しゅぎょうんでいるとはおもわなかった。あなたのからだからは丁度ちょうどかみさまのように光明ひかりします……。』
脇船の底——長櫃ながびつの中——そこにあるのは永遠の悲恋と恐怖の闇ではないか。このかがやかしい光明ひかり微塵みじんもないのである。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最後に護身刀まもりがたなを引抜て真一文字に掻切かききりたる時に、一朶いちだの白気閃めき出で、空に舞ひ上りたる八珠「粲然さんぜんとして光明ひかりをはな」
そして彼は最後に言う「我は暗き地、死のかげの地にかん、この地は暗くして晦冥やみに等しく死の蔭にして区別わかちなし、かしこにては光明ひかり黒暗くらやみの如し」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ロレ 灰色目はひいろめあした顰縮面しかめつらよるむかうてめば、光明ひかりしま東方とうばうくもいろどり、げかゝるやみは、かみまへに、さながら醉人ゑひどれのやうに蹣跚よろめく。
その瞬間、ブライアン氏の頭に一筋の光明ひかりが射した。で、この雄弁家は今日まで自分の方でも相手の皺くちやな顔をよく覚えてゐるやうな調子で話しかけた。
その今までになく明るく見える安全燈ラムプ光明ひかり越しに、自分の左右の肩の上から、まつげを伝って這い降りてくる、深紅の血のひもをウットリと透かして見たのであったが
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かも其悪魔が私の父です——今日こんにち会合あつまりは廿五年の祝典いはひでは御座いませぬ、光明ひかりを亡ぼす悪魔の祝典いはひです、——我父の打ちはす神殿の滅亡をひざまづいて見ねばならぬとは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
徃時むかしは人朕が光明ひかりを奪ひて、われ泥犂ないりの闇に陥しぬ、今は朕人を涙に沈ましめて、朕が冷笑あざわらひの一声の響の下に葬らんとす、おもひ観よ汝、漸く見ゆる世の乱は誰が為すこととぞ汝はおもふ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
他人ひとのためにもなる光明ひかり歓喜よろこびにあふれたものになって来るのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すべての男性に、ネサは光明ひかりであり火焔ほのおでおありなされました。
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
さきの世に如何なるちぎり結ばれて斯かる光明ひかりに遇ふ身なるらん
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
光明ひかりにいつしかけて流れ出でぬ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
溢れる光明ひかりの裡に座して
生命いのち光明ひかり消えうせぬ。
大権威たいごんいあさ光明ひかり
しやうりの歌 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
永劫とは光明ひかり歓楽よろこび
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
光明ひかり暗黒やみ道程みちすじ! それは人生ひとのよの道程でもある。光明と暗黒の道程を辿って行く左門の姿は、俯向いていて寂しそうで、人生の苦行者のように見えた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
戀人こひゞとそのうるはしい光明ひかりで、戀路こひぢやみをもらすといふ。またこひめくらならば、よるこそこひには一だん似合にあはず
再び若くして地の上に立つに至るであろう——と黒雲の中に光明ひかりは隠見するのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その蛇は身体からだ中宝石で出来ていて、その眼は黄玉の光明ひかりを放ち、紅玉ルビーの舌をペロペロと出していましたが、この蛇が美留藻の紫色の髪毛かみのけの上に、王冠のようにとぐろを巻いて、きっと頭をもたげますと
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ポツチリ咲いたやうなくちびるの魅力など、一つ/\の美しさはかぞへ立てても際限がありませんが、何より、躰内に灯された處女の生命が、一びん、一笑、一擧手、一投足に、恐ろしいばかりの光明ひかりになつて
知らでこそ仏をよそに思ひしか我も光明ひかりうちに住む身を
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
不滅の光明ひかりの宮の
焔の后 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ヂュリ あの光明ひかりあさぢゃない、いえ/\、朝日あさひではないわいの。ありゃ太陽たいやうがおまへために、今宵こよひマンチュアへの道案内みちしるべ炬火持たいまつもちやくさしょとて、きふ呼出よびだしたひかものぢゃ。
◯次の十五節は言う「また悪人はその光明ひかりを奪われ、高く挙げたる手は折らる」と。これまた朝の形容の一部である。暗黒の間悪人はその悪をほしいままにしてその手を高く挙げて悪に従う。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)