什器じゅうき)” の例文
大事な什器じゅうきなどを、争って外へ担ぎ出していたのは彼らであったが、その品物も見あたらなければ、奉公人たちも見えないのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほか土蔵のなかの骨董こっとう什器じゅうきたぐひから宝石類に至るまで、ほとんど洗ひざらひ姉さまのところへ運び出されたやうな感じでした。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
夏の日、大切なお客が来るとわたしは彼をそこへしょうじ入れた。このうえない召使いが床をぬぐい、家具の塵をはらい、什器じゅうきを整頓した。
「絶対に敵対出来ぬという、威大の什器じゅうきが造られましたならば、四方に割拠かっきょする武将達も到底及ばぬ事を知って、自ら兵を収めます筈」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
当直の人々や近所の人々によって火は消されたが、室内の什器じゅうきはほとんど用をなさなかった。重要な書類はことごとく消失した。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「要屋のしょうばいは知っているな」と直衛が坐るのを待って宗兵衛が云った、「呉服、染物、什器じゅうきのあきないに、両替と質屋をやっている」
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それから心を落ちつけ、目を皿のようにして、室内の什器じゅうきを一つ一つ見ていった。その間に、白木の撃ちだす銃声が、しきりに私の心臓に響いた。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
マヨイガに行き当りたる者は、必ずその家の内の什器じゅうき家畜何にてもあれ持ち出でて来べきものなり。その人にさずけんがためにかかる家をば見するなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ガラスというガラスはことごとく粉微塵となり、扉は倒れ、家具什器じゅうきは破壊され、目もあてられぬ惨状を呈した。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
国貞は美貌の侍女じじょ貴公子が遊宴のじょうによりて台榭だいしゃ庭園ていえんの美と衣裳什器じゅうきの繊巧とを描出えがきいだして人心を恍惚こうこつたらしめ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
即ち堂塔伽藍がらんの修費、燈明台とうみょうだいその他の什器じゅうき購入費、掃除費そうじひ及び読経どきょう僧侶の手当でありますが、そのうちでも最も多く費用のかかるのは前にいうマルです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いよいよ敗軍ときくと逃出す騒ぎで、什器じゅうきを池のなかに投込んだり——上野山下の商家では店の穴蔵へ入れたという——井戸へ入れておいたりして逃出した。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
結局、こっちの条件が悪く、負けそうだったので、持って帰れぬ什器じゅうきを焼いて退却した。赤旗が退路を遮った。で、戦争をした。そして、また退却をつづけた。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
塀、壁の修繕、植木の手入れ、調度、器具類の掃除、掛物、什器じゅうき類の下調べ、邸の中も、蔵の中も、庭も、門の外も、廊下も、人影と、足音とが、動いていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
殊に素晴しいのはその什器じゅうきや調度で、全部マホガニーの、それも古いロマノフ朝風を模したものである。
(新字新仮名) / 楠田匡介(著)
リュックを開いて、兄の取り出しているものは、掛軸でもなければ什器じゅうき、茶道具の類でもありません。五里の山道を背負って来るために、あによめが詰めたのでしょう。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼は道具や什器じゅうきをつくったり、騾馬らばを馴らしたり、漁をしたり、狩をしたりせねばならなかったのである
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
備品什器じゅうきその他運営上の費用一切等々。一個人の学究には負い切れぬ多額の費用と煩瑣はんさな事務、考えると躊躇ちゅうちょすべき事のみ多く、なかなか実現されそうになかった。
泰然たいぜんとしてその机を階下に投じ、た自個の所有にかかる書籍、調具を顧りみず、藩主恩賜おんしの『孫子そんし』さえも焼燼しょうじんに帰せしめ、一意いちい以て寓家ぐうか什器じゅうきを救わんとせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
プランシュ・ミブレー街では、屋根の上から軍隊を目がけて、古い皿の破片や什器じゅうきなどが投げられた。
その部屋には殆ど何の什器じゅうきもなくって、机の上に原稿紙があるのと火鉢の傍に煙管が転がっているばかりであった。障子を開けるといつも濛々もうもうたる煙の中に坐っていた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
引渡しに先だって、五月四日の午前十一時から、家具什器じゅうきの点検引合わせ、ならびに建築構造物の損傷改変の有無を調査するから、立ち会うようにという命令なのである。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いわくサンドミンゴ・デラ・カルザダで一女巡礼男に据え膳を拒まれた意趣返しに、その手荷物中に銀の什器じゅうきを入れ窃盗と誣告ぶこくす。その手荷物を検するに果して銀器あり。
クルーソーが彼の為めに難破船まで什器じゅうき食料を求めに行ったのは、彼自身に取っての道徳ではなかったろうか。しかしクルーソーはやがてフライデーを殺人者から救い出した。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
金網行灯かなあみあんどんがぼんやり照らしている、脇玄関で、彼等が、こんなことをいい合っている頃、土部三斎は、奥まった蔵座敷で、黒塗り朱塗り、堆朱彫ついしゅぼり桐柾きりまさ——その他さまざまの、什器じゅうきを入れた箱類を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と、惣右衛門は、役宅の中から、三卿饗応の為に持ちこんであった浅野家の什器じゅうきを、いわゆる手玉渡しに奥からどしどしと運びだした。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
書付けをしらべるまでもなく、栄二の預けた金だけで、この家具什器じゅうきが買えるわけはない、さぶの金が加わっていることは疑う余地がなかった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もう無体にしゃくにさわってきて、そこらにある什器じゅうき家具を手あたり次第にぶち壊してやろうかと思い、まず卓子テーブルに手をかけたのであるが、やっぱり駄目だった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
土用の明けるその日を期して、池上いけがみ本門寺ほんもんじを始め諸処の古寺では宝物の虫干かたがた諸人の拝観を許す処が多い。種彦の家でも同じくその頃に毎年蔵書什器じゅうき虫払むしばらいをする。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
無心の什器じゅうきをも、人と対等視した例もすくなからず、一六二八年、仏国ラ・ロシェルに立て籠った新教徒降った時、仏王の将軍、かの徒の寺に懸けあった鐘を下ろし、その罪を浄めるため
一本の秋の団扇も什器じゅうきかな
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「落ちゆく先とて定かでない。いたずらに家具什器じゅうきをたずさえても荷になることぞ。何も持つな。ただ弓矢と駒のみを大事に持て」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これもご吟味のはじめにお答え申しましたが、業態はお届けのとおり、呉服太物ふともの、家具什器じゅうきの販売にございます」
改訂御定法 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうですわねえ」と光枝はわざと間のびのした返事をして、帆村がじれるのを楽しみながら、「旦那様のお居間の什器じゅうきで、位置の変ったものといえば——」
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また山水画は『銀世界』及び『狂月望きょうげつぼう』等の絵本において石燕風せきえんふう雄勁ゆうけいなる筆法を示したり。摺物すりものおうぎ地紙じがみ団扇絵うちわえ等に描ける花鳥什器じゅうきの図はその意匠ことに称美すべきものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二人共、昨夜は、納戸頭奥田孫太夫なんどがしらおくだまごだゆうたちと共に、什器じゅうき諸道具を、鉄砲洲のおくらから徹夜で運んで、一睡もして居ないのであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ありとあらゆる什器じゅうきや家具を調べ、今は、壁をかるく叩いてまわっている。どこかに彼の知らない極秘のかくし場所があるかもしれないと思ったからだ。だがみんな失敗だった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さかずき持つ妓女ぎじょ繊手せんしゅは女学生が体操仕込の腕力なければ、朝夕あさゆうの掃除に主人が愛玩あいがん什器じゅうきそこなはず、縁先えんさきの盆栽も裾袂すそたもとに枝引折ひきおらるるおそれなかりき。世の中一度いちどに二つよき事はなし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
城館しろやかた、寺社の修復、表座敷から台所に至る諸什器じゅうき調度の修繕、掃除、検査など、事務は複雑多岐にわたっているが、主馬は職を継いで一年と経たぬうちに、その適任であることを証拠だてた。
山椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
青蓮院しょうれんいんを訪れると、時々、こういう目馴れない食味や、什器じゅうきを見せられて、僧正の知識に驚かされるのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
箪笥たんす等の日本的家居かきょ及び什器じゅうきに対して、ごうも親密なる特殊の情趣を催したる事なし。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここはどうやら食堂けん喫煙室らしく、それと思わせるような什器じゅうきや家具が並んでいた。なんにせよ、どうも豪勢なものである。——若い警官は、相変らず彼の後について、室内へ入ってきた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
襖や障子を取払い、什器じゅうきを片付けた家の中はがらんとして、庭の若葉の光が青々と板敷に映じている……まだ武家屋敷では畳を用いていなかった時代で、床板は黒光のするほど磨きこまれている。
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで今夜は、この大乗院の什器じゅうき在金ありがねを残らず貰ってゆくつもりだが、何か、いいたい苦情があるか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
箪笥たんす等の日本的家居かきょ及び什器じゅうきに対して、ごうも親密なる特殊の情趣を催したる事なし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そんなことはありません。大いに結構です。ところで貴女は探偵だから分るでしょうが、あの大花瓶を壊されてから主人公は、なにか室内の什器じゅうきの配置をかえたということはありませんか」
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一、衣類、家具什器じゅうき等、新調すべからざる事。
酒やのかかりに朱富しゅふ。それと縁のある宴会の主事は宋清そうせい什器じゅうき、つまり納戸役なんどやく白勝はくしょう杜興とこうのふたりだ。いやそのほかにまだ対岸には四ヵ所の見張り茶店がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我邦わがくに現代における西洋文明模倣の状況をうかがひ見るに、都市の改築を始めとして家屋什器じゅうき庭園衣服に到るまで時代の趣味一般の趨勢にちょうして、うたた余をして日本文華の末路を悲しましむるものあり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)