たなご)” の例文
盛装の腰元に付けさせ、二寸足らずのたなご青鱚あおぎすを釣って、悦に入ったというに至っては、有閑無為の人達の贅が馬鹿馬鹿しくも気の毒になります。
『鮒ですよ。たなごは小さくて相手に足りないし、沙魚はぜも好いですが、暴風はやてが怖いので……。』と、三種を挙げて答へぬ。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
この青鱚あおぎす釣りともうしますのは、寛文のころ、五大力仁平ごだいりきにへいという人が釣ったのがはじめだとされているんでございまして、春の鮒の乗ッ込釣り、秋のぼらのしび釣り、冬のたなご釣りと加えて
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
生憎あいにく大風が出て来て、たなご位のを三つ挙げた丈で、小一日暮らし、さて夕刻かえらうとすると、車は風に吹き飛ばされたと見え、脇の泥堀どぶの中へのめツてたです。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
あっしは稼業だから来いと言われれば、どこへでもお供をしましたが、お手当祝儀を世間並みの倍貰っても、百両の釣竿でふなたなごを釣るのを見ちゃ良い心持はしません。