魘夢えんむ)” の例文
われは眠ることを期せずして、身を藁蓆の上にたふしゝに、さきの日よりの恐ろしき經歴は魘夢えんむの如く我心をおびやかし來りぬ。
夜になると、それが幻視錯覚になつて、とうとうしまひには魘夢えんむになつて身を苦しめる。死や、とぶらひや、墓の下の夢ばかり見る。たまにはいつもと違つて、生きながら埋められた夢を見る。
常に美しいとばかり思っていた面貌の異様に変じたのに驚いて、はだあわを生じたが、たちまちまた魘夢えんむおびやかされているのではないかと疑って、急に身を起した。女が醒めてどうしたのかと問うた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)