二日市の橋元屋という旅館の裏に住んでいる時、突然に父が帰って来て、小さな錻力のポンプを呉れた時の嬉しかった事は今でも忘れていない。
風谷は白耳義通ひの船の中で、汗みづくになつて豆腐を拵へた。そして船がアントワープに着くと、錻力の缶へ叮嚀にそれを納めて、ブラツセルに急いだ。
⦅桜井駅楠公父子の別れ⦆とかかれた題の下を、人形からでてきた錻力製のインコが青磁の皿をたたいてゐたが、わたしがゆきすぎるとき、そいつは精一ぱい叫んだものである。
室の中の有様もまた、周平の眼には物珍らしかった。安価な青い瀬戸の円火鉢には、錻力の大きな薬鑵が疊の上にじかに置いてあった。その横の火燵には、派手な銘仙の布団がふわりとかかっていた。