野晒のざらし)” の例文
みちのく以来の、純で野性な若人たちも、あらましは戦場の野晒のざらしと化し去って、残るは少なく、多くは、以後の部下だった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さながら野晒のざらし肋骨あばらぼねを組合わせたように、れ古びた、正面の閉した格子を透いて、向う峰の明神の森は小さな堂の屋根を包んで、街道を中に、石段は高いが、あたかも、ついそこに掛けた
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おふくろやこどもでもいなかったら、とうにどこかで野晒のざらしになってしまっていたに相違ない。もっともその方がよほど気楽かもしれないがね。荘子という本の中に荘子とドクロとの問答がある。
だだをこねる (新字新仮名) / 辻潤(著)
「この野晒のざらしは、どうなさるんです。上の金剛山寺こんごうせんじまで持ってゆくんですか」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣の光は閃々せんせんと乱れて見えたが、その時、ここ、もちの木坂の一地点——ほとんど、人と人と人と人とのかたまりが、一個の野晒のざらしをあばき合う狼群ろうぐんのごとく眺められて、さしも、法月弦之丞
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんなところに、野晒のざらしがすててある」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)