ちぬ)” の例文
寺田先生の随筆の中に『鐘にちぬる』という一文がある。冒頭に「この事に就いて幸田露伴博士の教を乞うたが」
露伴先生と科学 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
同博士がいろいろシナの書物を渉猟された結果によるとちぬるという文字は犠牲の血をもって祭典を挙行するという意味に使われた場合が多いようであるが、しかしとにかく
鐘に釁る (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
が、彼の剣には、ファンガリィの峡谷に於ける独逸水兵の血潮がちぬられている。独逸人は皆マターファの選出に絶対反対であった。マターファ自身も別に強いて急ごうとしなかった。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ぬさの如く束ねたる薄金うすがねはさら/\と鳴り、彩りたる紐はたてがみと共にひるがへり、ひづめの觸るゝ處は火花を散せり。かゝる時彼鐵板は腋を打ちて、拍車にちぬると聞く。群衆は高く叫びて馬の後に從ひ走れり。
一方で、鐘にちぬるというシナの故事に、何か物理的の意味はないかという考えから、実験をしてみたいと思って、半鐘の製造所を詮議すると、それがやはり奈良県だということがわかった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)