通行とほり)” の例文
その喇叭の音は、二十年来はたと聞こえずなつた。隣村に停車場が出来てから通行とほりが絶えて、電信柱さへ何日しか取除とりのぞかれたので。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
通行とほり少き青森街道を、盛岡から北へ五里、北上川にけた船綱橋ふなたばしといふを渡つて六七町も行くと、若松の並木が途断えて見すぼらしい田舎町に入る。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
間が浅い凹地くぼちになつて、浮世の廃道と謂つた様な、塵白く、石多い、通行とほり少い往還が、其底を一直線ましぐらに貫いてゐる。ふたつ丘陵おかは中腹から耕されて、なだらかな勾配を作つた畑が家々の裏口まで迫つた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)