ためら)” の例文
そしてかなりためらう気持を押し切って、妻の部屋のふすまを明けた。きぬはまるで襲われた者のように、非常な速さで起き上り、恐怖におののく眼でこちらを見た。
山椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかる内近村に久しく行商を営み、諸方の俗伝に精しき老人この件に関して秘説を持つと聞いて少しもためらわず。
かく想う時、どうして私はこの訪れを果さずにいられよう。貴方がたもこの書翰を手にして、私に答える事をためらっては下さらぬであろう。私はそれを信じたい。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かく想う時、どうして私はこの訪れを果さずにいられよう。貴方がたもこの書翰を手にして、私に答える事をためらっては下さらぬであろう。私はそれを信じたい。
朝鮮の友に贈る書 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「刀自に会いに来たんだ」彼はちょっとためらったが、七十郎の顔を見て云った
ためらいがちに、女の声でこう云った。振返ってみると、五十歳ばかりの女が、そこにいた。彼は立ちあがって、ぼんやり黙礼しながら、ずっと向うの、墓石の蔭に、あの男がいるのをちらと認めた。
夕靄の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)