覊絆きずな)” の例文
従来久しく世間の無理解なる差別待遇の覊絆きずなに囚われて、人間としての活動を束縛せられ、生存を脅かされたことから解放せられんとの運動であります。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
ただこの順境が一転して逆落さかおとしに運命のふちへころがり込む時、いかな夫婦の間にも気まずい事が起る。親子の覊絆きずなもぽつりと切れる。美くしいのは血の上を薄くおおう皮の事であったと気がつく。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人に云わぬ盾の歴史のうちには世もいらぬ神もいらぬとまで思いつめたる望の綱がつながれている。ウィリアムが日毎夜毎に繰り返す心の物語りはこの盾と浅からぬ因果の覊絆きずなで結び付けられている。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)