褊狭へんきょう)” の例文
されども歌人皆頑陋がんろう褊狭へんきょうにして古習を破るあたわず、古人の用いきたりし普通の材料題目の中にてやや変化を試みしのみ。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
それだけならばまだかったが、徳は兄には似ないで、かえって父栄玄の褊狭へんきょうな気質を受け継いでいた。そしてこれが抽斎にアンチパチイを起させた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
久しく薗八一中節そのはちいっちゅうぶしの如き古曲をのみ喜び聴いていたわたしは、褊狭へんきょうなる自家の旧趣味を棄てておくせながら時代の新俚謡しんりように耳を傾けようと思ったのである。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
善と悪、是と非、愛と憎しみ、寛容と褊狭へんきょうなど、人間相互の性格や気質の違いが、ぶっつかり合って突きとばしたり、押し戻してまた突き当ったり、休みなしに動いている。
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
韓愈の見解或は褊狭へんきょうに走れるや知るべからず幕府の政令苛酷に過ぎたるや亦知るべからず。然れども両者倶に誠意を以てその信ずる処を行わんと欲せしや明かなり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)