みずち)” の例文
蛇は水の中で棲息しないが、みずちみずちは水中に棲む。土の底に虬がいるといったりする。また日本人はよく間違えて、大蛇も水の底にいるようにいう。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この事件の犯罪現象を一貫しているみずちのような怪物、——すなわち事件の推移経過が明白にそれへ向って集束されてゆこうとしても、法水でさえどうにも防ぎようのない
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
みずちをミツと訓んだ転訛であろうと〔註四〕。
獅子舞雑考 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
鹿児島ではミツドンといい、これはみずちのことだといっている。虬は何だかわからないけれども、虫扁の字を書くので蛇の一種だと思っているらしいが、ミズシンと関係あるものであろう。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それが、群青ぐんじょうなまの陶土に溶かし込んだような色で、粘稠ねっとりよどんでいる。その水面に、みずちの背ではないかと思わせているのが、金色を帯びた美しい頭髪で、それが藻草のようにたなびいているのだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)