虫蝕むしくい)” の例文
虫蝕むしくいと、雨染あまじみと、摺剥すりむけたので分らぬが、上に、業平なりひらと小町のようなのが対向さしむかいで、前に土器かわらけを控えると、万歳烏帽子まんざいえぼしが五人ばかり、ずらりと拝伏した処が描いてある。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その中の棚にはすっかけに乗せてあった経机きょうづくえではない小机の、脚をえぐって満月をすかしたはいいが、雲のかかったように虫蝕むしくいのあとのある、ったか、古びか、真黒な、引出しのないのに目を着けると……
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)