薄暮たそがれ)” の例文
暗澹あんたんたる空は低く垂れ、立木の梢は雲のようにかすみ渡って居ながら、紛々として降る雪、満々として積る雪に、庭一面は朦朧もうろうとして薄暮たそがれよりも明かった。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
薄暮たそがれの気のひし/\とせまつてくる小径に、しばらくの間私は茫然と立ち尽した。私の眼には、涙が浮んで、私の胸はこみ上げてきた。私は声を揚げて泣くか叫ぶかしたかつたが、しかしできなんだ。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
薄暮たそがれ水路すゐろに似たる心ありやはらかき夢のひとりながるる
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
薄暮たそがれにせきもあへぬをんな吐息といき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)