蓮沼はすぬま)” の例文
「ねえ、お父さん、ほら、蓮沼はすぬまさん……たうとう次官におなりになつたぢやないの。出世がしらね。尤も、学者の方面ぢや、いくらも名前の出た人がゐるけど……」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
新らしい女が随分ふえていて、お上さんは病気で二階にせっていた。——又明日から私は新宿で働くのだ。まるで蓮沼はすぬまに落ちこんだように、ドロドロしている私である。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
本所ほんじょ茅場町かやばちょうの先生の家は、もう町はずれの寂しいところであった。庭さきのかきの外にはひろい蓮沼はすぬまがあって、夏ごろはかわずやかましいように鳴いていた。五位鷺ごいさぎ葭切よしきりのなく声などもよく聞いた。
左千夫先生への追憶 (新字新仮名) / 石原純(著)
白き蓮沼はすぬまに咲くごとく
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ちよつとしよげ気味で、浦川うらかは子爵の十口はどうかと思ふとか、蓮沼はすぬま司法次官の四口に至つては、冷淡も甚だしいではないかとか、満洲から名前も知らないやうな男で二十口といふ申込があるのは
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)