蒸気いきれ)” の例文
旧字:蒸氣
崖下ながら、ここの屋根に日は当るが、軒もひさしもまだ雫をしないから、狭いのに寂然しんとした平屋の奥の六畳に、火鉢からやや蒸気いきれが立って、炭の新しいのが頼もしい。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早や乾いた蒸気いきれなかに、すきなく打った細いくいと見るばかり、幾百条とも知れない、おなじような蛇が、おなじようなさまして、おなじように、揃って一尺ほどずつ、砂の中から鎌首をもたげて
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)