英田川あいだがわ)” の例文
ただ母はおろおろと、邸の長い石垣を逃げまわり、果ては英田川あいだがわの河原へ出て、泣き泣き河の中へざぶざぶ歩いてゆく。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英田川あいだがわの上流をなしている奔湍ほんたんは、その脚下、百尺のいわから巌へぶつかって、どうどうと、吠えくるッている。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元弘の年、後醍醐の輦輿れんよが通った姫路、杉坂、津山などの中国地方は、以前、宮本武蔵を書いていたころ、英田川あいだがわを中心に、かなり歩いた。もう二十余年も前にはなるが。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英田川あいだがわの水は今もながれているだろう、河原の花も咲いていよう、鳥も春を歌っているだろう。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵学の指南役として新免家しんめんけに仕えていた、父の無二斎がその新免という姓を主家からゆるされた盛りの時代に建てた屋敷なので、英田川あいだがわの河原を下にした石築き土塀まわしの家構えは
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村から四、五町ほど下流しも英田川あいだがわの河原には、撩乱りょうらんと春の草花がさいていた。お通は、負い籠をそこにおろして、蝶の群れにかこまれながら、もうそこらの花の根に、鎌の先をうごかしている——
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)