苦蓬にがよもぎ)” の例文
薄あかりのなかに凝視みつむる小さな銀側時計の怪しい數字に苦蓬にがよもぎにほひ沁みわたり、右に持つた薄手うすでの和蘭皿にはまだ眞赤まつかな幼兒の生膽がヒクヒクと息をつく。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
祖母の家の中庭の隅に、誰にも見捨てられた苦蓬にがよもぎの茂った穴がある。ゴーリキイは「結構さん」と並んでその穴に腰かけている。ゴーリキイは「結構さん」に訊いた。
裁判所長はテーブルに近づくなり、最も強い苦蓬にがよもぎ入りのウォツカを一杯ついで、『わしは一体全体、あのチチコフという男が何者なのか、ぶち殺されたって分りませんよ』
そして私は、無暗に人をうらんではいけないといふヘレンの心からの警告を忘れなかつたので、いつもよりはずつと控へ目に、膽汁たんじふ苦蓬にがよもぎ(怨恨毒意)を、その話に注ぎ込んだ。
祖父の家の中庭の隅に、誰にも見捨てられた苦蓬にがよもぎの茂った穴がある。小さいゴーリキイは「結構さん」と並んでその穴に腰かけている。ゴーリキイは「結構さん」に訊いた。
この可哀さうな男はどうかしてその悲しみを払ひ落さうと思つたのだが、それは無駄なことだつた。火酒はまるで蕁麻いらくさのやうに彼の舌を刺して、苦蓬にがよもぎの汁よりも苦く思はれた。