苦労人くろうと)” の例文
旧字:苦勞人
ね、小児こどもだって、本場の苦労人くろうとが裸で出張ってる処へ、膝までも出さないんだ、馬鹿にするないで、もって、一本参ったもんです。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところがこのマドロスに上越すところの海の苦労人くろうとが、現在自分の身近くにいる! という報告を、別人ならぬお松が聞かせてくれたのだから
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「わたしはそんな苦労人くろうとじゃアございませんよ」と、僕の妻は顔を赤くして笑った。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
今もいままで思いなやんでいた当座の問題——かけがえのない船の苦労人くろうと、思案の果てが、いつもあの不埒ふらち千万なマドロスの上に落ちて来るのが苦々しい限り。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
苦労人くろうとが二人がかりで、妙子は品のいい処へ粋になって、またあるまじき美麗あでやかさを、飽かずながめて、小芳が幾度いくたび恍惚うっとり気抜けのするようなのを、ああ、先生に瓜二つ、御尤ごもっともな次第だけれども
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)