興覚きょうざ)” の例文
旧字:興覺
要するにサタンという言葉の最初の意味は、神と人との間に水を差し興覚きょうざめさせて両者を離間させる者、というところにあったらしい。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
全く興覚きょうざめてしまって、神経を悩む病人のように、そんなことをぶつぶつ口の先に出しながら拳固にぎりこぶしを振り上げて柳沢をつつもりか、どうするつもりか、自分にも明瞭はっきりとは分らない
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
まことに、身もふたも無い興覚きょうざめた話で、まるで赤はだかにされたような気持であるが、けれども、これは、あなどるべからざる説である。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「それっきり」という感じは、あなたに遠ざけられ捨てられるという不安ではなく、私のほうで興覚きょうざめて、あなたから遠のいてしまいそうな感じなのです。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼等かれらのその醜いケチな根性が、どんなに僕たちの伸び伸びした生活をむざんに傷つけ、興覚きょうざめさせている事か。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
美濃は興覚きょうざめ顔に、「まあ、そんなところさ。」椅子から立ちあがって部屋の中を歩きまわり、「追い詰められた人たちは、きっときっと血族相食をはじめる。」
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
白々しく興覚きょうざめの宿命の中に寝起きしているばかりであります。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
術者は、少し興覚きょうざめた。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)