脆弱ひよわ)” の例文
ははは乃公おれか、乃公はそんな脆弱ひよわい身体でない。いはばこれも道楽の、好きでする仕事に、疲れなんぞ出るものなら、とうに死んでゐる筈なり。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
元が安物で脆弱ひよわいからであろうけれど、初やなぞに言わせると、何か厭なことがある前徴である。しかたがないから、片足袋ぬいで、半分跣足はだしになる。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
いつも彼の皮膚は病妻の容態をすぐそばで感じた。些細な刺戟しげきも天候のちょっとした変動もすぐに妻の体に響くのだったが、脆弱ひよわい体質の彼にはそれがそのまま自分の容態のようにおもえた。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
幼ないころは脆弱ひよわであつた長男をしみ/″\と眺めて、みよ子と同じに孝一の頭を撫ではじめたが、孝一は堅くなり、無愛想な表情で下を向いた。小さな反感と憎悪が孝一の胸に湧いてゐるのだつた。
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
お前のそういう脆弱ひよわなのが、そうでないより私にはもっとお前を
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)