胸突むなつき)” の例文
火口壁は四十度以上の急角度で、胸突むなつき八丁よりも峻嶮しゅんけんに、火口底までは直径約一千尺の深さで、頂上内院大火口よりも深いものである。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
道は胸突むなつきである。武蔵は黙って先へじ登って行く。——少し登るとまたやや平地になって来た。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「以前はこゝを胸突むなつきと申しましたな」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この登山に唯一のおそろしきものゝやうに言ひす、胸突むなつき八丁にかゝり、暫く足を休めて後をかへりみる、天は藍色に澄み、霧は紫微しびに収まり、領巾ひれの如き一片の雲を東空に片寄せて
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
頂上久須志くすし神社から、吉田へ引き落す北口の線は、最も急にして短く、同じ頂上の銀明水ぎんめいすいから、胸突むなつき八丁のけんすべって、御殿場町へと垂るみながら斜行する東口の線は、いくらか長く
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)