羽化登仙うかとうせん)” の例文
そいつが吾輩と同様独身者ひとりものの晩酌で、羽化登仙うかとうせんしかけているところへ、友吉の屍体をかつぎ込んで、何でもいいから黙って死亡診断書を書いてくれと云うと
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
飛行自在を望むならば、肉身の人間を忘れてしまって羽化登仙うかとうせんの風になるがいい。完全に肉身を忘れた時、初めて風になれるのじゃ。常陸は立派な人間であって精神の鍛錬は出来ている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
紅塵万丈の熱鬧ねっとう世界を遠く白雲緬邈めんばくの地平線下に委棄しきたって、悠々として「四条五条の橋の上」に遊び、「愛鷹あしたか山や富士の高峰たかね」の上はるかなる国に羽化登仙うかとうせんし去るのである。
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)