羞耻しゅうち)” の例文
君江のような、生れながらにして女子の羞耻しゅうちと貞操の観念とを欠いている女は、女給の中には彼一人のみでなく、まだ沢山あるにちがいない。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それを少年は明瞭めいりょうに意識してはいないながら、或る理由の分らない羞耻しゅうちと良心の不安とを感じた。
彼はそれを、貸借に関した羞耻しゅうちの血潮とのみ解釈した。そこで話をすぐ他所よそそらした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お千代の方では公然おっとの許可を得て心にやましいところがなくなったのみならず、夫のために働くのだということから羞耻しゅうちの念が薄らいで、心の何処どこかに誇りをも感じる。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)