織機はた)” の例文
窓に対して一台の織機はたあり。一人の女子その機を織る。綾糸は、青、赤、黄、白、黒の五色とす。糸は天井より垂れ下る。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
泥によごれた無数の軍馬のすねが、織機はたのように脚速きゃくそくをそろえて、敵方の甲冑武者かっちゅうむしゃせ、長槍や陣刀を舞わせながら、二人の顔の上を、躍りこえ、躍りこえして、駈け去った。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柿の枝などの年々なつかしい蔭を作るひさしのなかで、織機はたに上って、物静かにかちかちを運んでいる陰気らしい母親の傍に、揺籃つづらに入れられた小さい弟がおしゃぶりをしゃぶって
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)