紋切型もんきりがた)” の例文
途中の廊下で金を渡して、駅に着いてから相手の鞄を片手に……左様さようなら……と来るのが紋切型もんきりがたです。三等車で遣ってもおなじ事ですが、決して間違いはありません。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
必ず巴里パリイ仕立ての洋服を着用した、どこまでも開化の紳士を以て任じていた三浦にしては、余り見染め方が紋切型もんきりがたなので、すでに結婚の通知を読んでさえ微笑した私などは
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
組合? 紋切型もんきりがた辞典にいわく、それは右往左往して疲れて、泣く事である。多忙のシノニム。
渡り鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし、この愛情たるや、月並つきなみな、本能的な、紋切型もんきりがたのようなもんじゃない。意志が働いている。理性に導かれている。いわば論理的なものだ。そうだ、論理的、僕の捜していた言葉はこれだ
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
その紋切型もんきりがたとは、大分事情が違つて居さうです。
これは演壇に慣れた人間に特有の直感だがね……のみならず中には反抗的な態度や、嘲笑的な語気でもって質問を浴びせて来る奴が居る。しかもその質問というのが十人が十人紋切型もんきりがただ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)