竜閑橋りゅうかんばし)” の例文
旧字:龍閑橋
床屋の親爺が「竜閑橋りゅうかんばしってのは名代の橋だがなあ。」と口惜しそうに云うのが、読んでいてとても可笑しかったものだ。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
所は神田松永町かんだまつながちょうでさあ。なあに猫のひたい見たような小さな汚ねえ町でさあ。旦那なんか知らねえはずさ。あすこに竜閑橋りゅうかんばしてえ橋がありましょう。え? そいつも知らねえかね。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
竜閑橋りゅうかんばしから本石町ほんごくちょうまでの間——本銀町の一角を占めた宏大な構えですが、一と粒種の万吉が死んで、今朝はあわただしいうちにも、し付けられるような、陰気な空気に閉されております。
取立ての金を三十両ばかり持っているはずですから、フト魔がさして持逃げしたのではあるまいかと疑われましたが、あくる朝竜閑橋りゅうかんばしの側から定吉の死骸が上がって、その汚名だけはそそがれました。