へっつい)” の例文
そこは行詰に釜のかかったへっついがあり流槽ながしがあって、右側に板縁つきのへやがあったが、その縁側は肆の者が朝夕腰をかけて食事をする処であった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
跪坐しゃがんでいたときことばを返したのが胸にすえかねたといって、母親のために、そこへ突転つっこかされて、へっついの角で脇腹を打ったのがもとで、到頭不幸な胎児が流れてしまった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その煙りがこちらの部屋まで流れ込んで来るので、堀部君は慌てて入口の戸を閉めたが、何分にも寒くて仕様がないので、再びその戸をあけて出て、自分もへっついの前にかがんでしまった。
雪女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)