稿本こうほん)” の例文
くも書かれたり、ゆるゆる熟読じゅくどくしたきにつき暫時ざんじ拝借はいしゃくうとありければ、その稿本こうほんを翁のもととどめて帰られしという。
瘠我慢の説:01 序 (新字新仮名) / 石河幹明(著)
文久二年壬戌じんじゅうの春鷲津毅堂は二十歳のころに筆録した『親灯余影』四巻の稿本こうほんを、羽倉簡堂に示してその校閲を請うた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
出して見ようと思いまして——稿本こうほんを幸い持って参りましたから御批評を願いましょう
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
北向きの小窓のしたに机をすえて「松の花」という稿本こうほんに朱を入れていた佐野藤右衛門とうえもんは、つかれをおぼえたとみえてふと朱筆をおき、めがねをはずして、両方の指でしずかに眼をさすりながら
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)