「弥助はこの秋、禅定寺峠ぜんじょうじとうげという所で、間違いがあって落命いたした。だが、森啓之助の方は、只今お国詰くにづめで相かわらずにやっている」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれはおそらく、この木曾の夜の道を踏んで、あの禅定寺峠ぜんじょうじとうげいただきに、骨を埋めている唐草銀五郎のおもかげを、目にうかべずにはいられまい。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禅定寺峠ぜんじょうじとうげから、万吉を江戸に立たせ、自分だけ大阪へ戻ってきた弦之丞。訊ねれば、すぐにも会えると思っていた住吉村へ行ってみて、思わぬ失望をした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怖い物から逃げるように、万吉は、道中笠を西日へかたげて、禅定寺峠ぜんじょうじとうげから江戸へ心を急がせて行った——。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落ちあう場所は——大阪から河内かわち裏街道をとって大津へ迂回うかいするつもり——その方が人目に立つまいと思う。で、途中の禅定寺峠ぜんじょうじとうげを待ちあわす場所と定めておく。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今しも、笠取かさとりの盆地から、禅定寺峠ぜんじょうじとうげ七曲ななまがりを、ヒタヒタと登ってゆく武士の一群れがあった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)