睚眦がいさい)” の例文
内心睚眦がいさいうらみまでも記憶していて、時を待って、極めて温柔に、しかして深刻に、その恨みをむくゆるというような執念が、この男に
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分は平生露西亜の新聞や雑誌を読んで論調を察するに、露西亜人の日本に対する睚眦がいさいうらみは結んでなかなか解けない。時来らば今と戦争しようという意気込は十分見えている。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
近頃は戦さのうわささえしきりである。睚眦がいさいうらみは人を欺くえみの衣に包めども、解け難き胸の乱れは空吹く風の音にもざわつく。夜となく日となく磨きに磨く刃のさえは、人をほふる遺恨の刃を磨くのである。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)