「ほほうのう! ならば源七をバッサリやればよい筈、邪魔な真夫を生かしておいて、似せの心中者を細工するとはまたどうした仔細じゃ」
「いやらしい。そう言ってくんなんし。わちきにも真夫のひとりや二人はござんす。ゆっくり会うてから参りますと、そう言ってくんなんし」
親の六兵衛どんを前にして言いにくいことでござりまするが、両方共にぞっこんという仲でござりましてな、あれこそ本当の真夫——曲輪雀共もこのように申していた位でござります。
事の起りゃ御身分甲斐もねえ、みんな遠藤様の横恋慕からなんですよ。三日にあげず通いつめたが、御存じのように誰袖花魁には真夫がある。ぬしと寝ようか五千石取ろうかの段じゃねえんです。