白浪物しらなみもの)” の例文
風習の圧抑への反抗心を主題とする白浪物しらなみもの、——すべてそれらにおいて劇の葛藤かっとうを生み出す根拠は、常に社会の一時的なる風習である。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
自分は黙阿弥劇の毒婦と又白浪物しらなみものの舞台面から「悪」の芸術美を感受する場合、いつもボオドレエルの詩集 F'leurs du Mal を比較せねばならぬと思ふ。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
珍々先生は生れ付きの旋毛曲つむじまがり、親に見放され、学校は追出され、その後は白浪物しらなみものの主人公のような心持になってとにかくに強いもの、えばるものが大嫌いであったから
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昔は水戸様から御扶持ごふちを頂いていた家柄だとかいう棟梁とうりょうせがれに思込まれて、浮名うきなを近所にうたわれた風呂屋の女の何とやらいうのは、白浪物しらなみものにでも出て来そうな旧時代の淫婦であった。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)