発足)” の例文
旧字:發足
わたしもこの郷の女香具師の一人、いいえ貴郎様は発足たせませぬ! 無理にお発足ちと有仰おっしゃるなら、竹法螺吹いて止めるでござんしょう
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東京を発足ったのは十一月一日、少し霧のある朝で、西の空には月が懸っていた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
平野屋の寮から例の物を持って、誰か江戸へ発足ちはしまいかと、その警戒にやってきたのだが、変な侍三人に、闇討ちされようとは思わなかったよ。どうも今夜は気に入らない晩だ。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
精進しょうじを過ぎ本栖もとす発足って駿甲の境なる割石峠の辺から白峰が見える。霞たつ暖い日で、山は空と溶け合うて、ややともすればその輪廓を見失うほど、はるかに、そしてかすかなものであった。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)