疲労困憊ひろうこんぱい)” の例文
師直、師泰もこの日に負傷し、疲労困憊ひろうこんぱいのかたまりのような残軍を湊川まで引いて、残る将士をかぞえてみると、寥寥りょうりょう、一千にも足りなかった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
再びお絹を背負い上げて登りはじめようとしたが、この時はがんりきの身体もほとんど疲労困憊ひろうこんぱいの極に達して、自分一人でさえ自分の身が持ち切れなくなってしまいました。
それからまた微々びびと泳ぎだしたが、陸に向いて泳いでいるのか、船のほうへ帰っているのか方角もつかず、ただもう藻掻きにもがいているうちに、自然と岸辺に流れつき、疲労困憊ひろうこんぱいの極
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あの時は、疲労困憊ひろうこんぱいの極に達していたわれわれに対して、劉表と張繍は必殺の備えをして待ちかまえていた。これ、死一道の覚悟をわれらに与えたものである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨は、よろいや具足をとおして、肌にしみ入る。時しも十一月の寒さではあるし、道はぬかり、夜はまだ明けず、曹操を始め幕下の者の疲労困憊ひろうこんぱいは、その極に達した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)