甲論乙駁こうろんおつばく)” の例文
今見れば何でもないまずい画であるが、好奇心から評判になると同時に道学先生の物議をかもし、一時論壇は裸体画論を盛んに戦わして甲論乙駁こうろんおつばくしばらくは止まなかった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「誰とも知らぬ二、三の人と出逢って、ここに立寄ったが、医道について論ずるのに、甲論乙駁こうろんおつばくという有様で果てしがなく、ついに言伏いいふせはしたが、ひどく疲れた」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
しかれどもこれらの事件は他の事件と聯絡して一時歌界の問題となり、甲論乙駁こうろんおつばく喧擾けんじょうを極めたるは世人をしてやや歌界に注目せしめたる者あり。新年以後病苦益〻加はり殊に筆を取るに悩む。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
さもないと、あちこちの大頭株あたまかぶから、厄介やっかいな文句が出そうだ。これはどうも普通のスパイのように簡単には扱えない——そこで、第二号を取り巻いて私語ささやきを交し出す。甲論乙駁こうろんおつばく、なかなか決しない。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)