猜疑深うたがひぶか)” の例文
斯う丑松は猜疑深うたがひぶかく推量して、何となく油断がならないやうに思ふのであつた。不安な丑松のまなこには種々さま/″\な心配の種が映つて来たのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『どうしても其様そんなことは理窟に合はん。必定きつと神経のせゐだ。一体、瀬川君は妙に猜疑深うたがひぶかく成つた。だから其様そんな下らないものが耳に聞えるんだ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
楽しい過去の追憶おもひでは今の悲傷かなしみを二重にして感じさせる。『あゝ、あゝ、奈何どうして俺は斯様こんな猜疑深うたがひぶかくなつたらう。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)